食品衛生責任者と食品衛生管理者の違いは?どんな職場に必要?

春も終わりに近づき、気温が高い日も増えてきました。季節が夏に向かうにつれて食中毒の発生件数も増えていくでしょう。食中毒が飲食店や製造工場から発生すれば大変なことになります。そのようなことを防ぐために、衛生管理を行うのが食品衛生責任者や管理者です。

今回は、この2つの職務内容や選任条件、さらに違いをご紹介しましょう。食品衛生責任者や食品衛生管理者は名前が似ているため、混同されがちです。しかし、選任しなければいけない場所や選任条件、さらに職務内容も異なります。食品製造業や飲食業にたずさわっている方は、ぜひこの記事を読んでこの2つの違いを知ってください。

  1. 食の安全を守る法律は?
  2. 食品衛生責任者と食品衛生管理者とは?
  3. 食品衛生管理者や食品衛生責任者は何をするの?

1.食の安全を守る法律は?

食は、私たちが生きるためになくてはならないものです。基本は自炊ですが、今、街中にいろいろな飲食店がありますし、コンビニやスーパーにはお弁当や軽食がたくさん売られています。そのため、自炊をする時間がなくても困ることはありません。

しかし、飲食店で提供される食品や工場で製造された食品は製造過程を見ることはできないのです。ですから、衛生意識の低い人や利益ばかりを優先した人が調理や製造にたずさわった場合、健康に悪影響が出る食品を提供されたり流通したりすることもあるでしょう。

しかも今は流通が発達していますから、ひとつの工場から全国に食品が出荷されることも珍しくありません。そのため、食の安全を守るために定められたのが「食品衛生法」です。

食品衛生法とは、食品に使ってもよい添加物、包装容器、成分表の提示方法、さらに、食品衛生管理者や食品衛生責任者の選任などを定めています。食品工場や飲食店は必ずこの法律に沿って営業や操業を行わなくてはなりません。違反すれば操業停止や営業禁止の罰則などがあります。

食品衛生法が食の安全を守るためにある法律なんですね。
はい。食品に使用できる添加物、包装容器、成分表の提示方法に加え、食品衛生管理者や食品衛生責任者の選任などを定めています。

2.食品衛生責任者と食品衛生管理者とは?

さて、いくら食品衛生法が制定されているとはいえ、それを工場や店の従業員全員が熟知して守るのはなかなか難しいものです。そのため、食品衛生の責任者を選任して法律に沿った製造や営業ができるようにします。この項では、食品衛生責任者と食品衛生管理者の役割とこの2つの違いをご紹介しましょう。

2-1.食品衛生責任者とは?

食品衛生責任者とは、飲食店、販売店、食品製造施設など食品にたずさわる業務を行っている施設ひとつにつき、必ず1人専任が必要な役職です。食品衛生管理者を選任しなければならない施設以外の食品を扱う施設には、すべて選任する必要があると覚えておきましょう。

営業許可が下りた施設ひとつにつき、1人の選任が必要です。今は、チェーン店形式のレストランもたくさんあります。しかし、複数の店舗を1人の責任者が兼任することはできません。

また、コンビニエンスストアやスーパーなどたくさんの商品を扱っている場所でも、食品を製造販売している場所では、専任が必要です。食品衛生管理者になるためには、栄養士、調理士、と畜場法に規定する衛生管理責任者などの資格を取得するか、各自治体が主催する講習会を受講する必要があります。資格を取得していれば、講習を受けなくてもかまいません。食品衛生管理者は、飲食店や食品製造工場が食中毒や食品衛生法違反を起こさないように、食品衛生上の管理運営を行います。

2-2.食品衛生管理者とは?

食品衛生管理者とは、製造や加工の過程で特に衛生上の考慮を必要とする食品を製造する工場で選任する必要があります。食品衛生責任者のように、講習を受けられれば誰でもできる、というものではありません。医師、歯科医師、薬剤師、獣医師などの有資格者や、定められた学校を卒業した者。さらに3年以上加工工場などの衛生管理の経験があり、なおかつ都道府県知事が定める講習会に参加した方でないと選任できないのです。

また、食品衛生管理者を選任しなければならないのは、ハムやベーコンなどの食肉加工食品や、乳製品の加工食品、油脂の加工食品などの製造工場。さらに、放射線照射食品を扱う工場などです。

2-3.責任者と管理者の違いは?

食品衛生責任者と食品衛生管理者は語感もよく似ています。ですから、同じようなものだと思う方もいるでしょう。しかし、選任できる人の資格を見るだけでも管理者の方がより専門的な知識が必要なことが分かります。

また、管理者は飲食店や、お弁当や菓子、飲料などを製造する工場には必要ありません。食肉や乳、魚などを別のものに加工する工場に必要と覚えておきましょう。

一方、食品衛生責任者の方は食にかかわる仕事をする場所ほとんどに必要です。ただし、食品衛生管理者と食品衛生責任者の両方を置く必要はありません。食品管理者は食品衛生責任者になれます。しかし、その逆はできませんので注意しましょう。

食品衛生責任者と食品衛生管理者は似ているようで違うんですね。
食品衛生責任者は食にかかわる仕事をする場所ほとんどに必要です。食品管理者は食品衛生責任者になれますが、その逆はできないので注意しましょう。

3.食品衛生管理者や食品衛生責任者は何をするの?

では、最後に食品衛生管理者や食品衛生責任者が職務として行うことをご紹介します。特に、飲食店に勤務している方はぜひ覚えておきましょう。

3-1.食中毒の防止

責任者も管理者も一番重要な職務は食中毒の防止です。食中毒の怖いところは、一度発生すると犠牲者が多数出やすいという点にあります。

また、医学が発達した現在でも、食中毒が重症化すると命の危険があるのです。さらに、加工工場では一度にたくさんの食品を製造して出荷するため、被害者が全国に発生することもあるでしょう。加工工場の衛生管理がずさんだったため食中毒が発症した例としては、雪印乳業の事件が有名です。食中毒を防止するためには、職場の衛生管理だけでなく従業員の教育も大切になります。

3-2.食品衛生法の順守

食品衛生法は、食の安全を守るための法律です。しかし、食にかかわる仕事をしているからといって、法律を知っているというわけではありません。食品衛生管理者や食品衛生責任者は、講習を受けていますので食品衛生法に対する知識を持っています。そこで、従業員の教育や職場の管理などを行いましょう。

また、食中毒が発生した場合、保健所に連絡することも大切な任務です。特に、飲食店の場合はどれほど気をつけても食中毒が発生するリスクはゼロではありません。顧客が自分で料理を取ったり調理したりする店ではなおさらでしょう。ですから、万が一食中毒が発生したら被害が広がらないように速やかな通報が重要になります。

食中毒の防止や食品衛生法の順守が任務なんですね。
従業員の教育や職場の管理などを適切に行い、食中毒が発生した場合は保健所に連絡し、被害が広がらないように速やかな対応をしなければなりません。

おわりに

今回は食品衛生責任者と食品衛生管理者についていろいろとご紹介しました。この2つは名前が似通っていますので、どちらがどのような場所に必要なのか分からなくなる方も多いでしょう。食品衛生責任者は飲食店、食品衛生管理者は特定の加工工場に必要と覚えておくと、分かりやすいかもしれません。

また、従業員がたった1人でも、食物を扱っていれば食品衛生管理者は必要です。小さい飲食店では、調理師1人で店を切り盛りしているというところも少なくありません。その場合は、主人が責任者を兼ねましょう。

食品衛生責任者になるには従業員の働き方は関係ありません。たとえば、パートでも食品衛生責任者にはなれます。ただし、責任が増しますので、パートに食品衛生責任者を任せるというところは少ないでしょう。大抵は店長やそれに準ずる責任者が責任者になります。