食品工場における衛生管理の実施方法は? 衛生問題の成功事例などを紹介

食品工場における衛生管理は、製品の安全性と品質を保証する上で不可欠です。

しかし、どうすれば衛生問題を解決できるのか、どのようなことを心がければいいのかなど、食品工場の衛生管理で悩んでいる方は多いでしょう。衛生管理の基本原則やポイントをしっかりと把握しておけば、製品の安全性が確保できるほか、品質が安定します。

本記事では、食品工場における衛生管理について詳しく説明しましょう。

  1. 衛生管理の基本原則
  2. 衛生管理の実施方法
  3. 衛生問題を予防するための戦略
  4. 衛生管理の成功事例
  5. 食品工場の衛生管理に関してよくある質問

この記事を読むことで、衛生管理の実施方法や衛生問題を予防するための戦略なども分かります。悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

1.衛生管理の基本原則

最初に、衛生管理の基本原則をチェックしましょう。

清潔に保ち、人々の健康を守る「衛生管理」

そもそも、衛生管理とは何なのでしょうか。簡単に説明すると、衛生管理は清潔に保ち、人々の健康を守ることが大きな目的です。衛生管理を行う主体は事業者と従業員など、対象範囲は職場や事業場となります。職場や事業場を清潔に保つことで、消費者や労働者の安全を守ることが衛生管理の役割です。

食品工場の衛生管理は「HACCP(ハサップ)」が基本

職場における衛生管理は労働者の健康を守ることが1番の目的ですが、食品における衛生管理は製品の安全性を確保することが主な目的です。食品を製品する工場においては、衛生管理の基準手法となる「HACCP」があります。HACCPとは、食品を製造する各工程で継続的な監視と記録を行い、安全性を証明するシステムのことです。たとえば、原料の入荷から加熱・加工など、それぞれの製造工程で安全管理を行います。

衛生管理の基本項目「5S」

食品工場の衛生管理で押さえておきたい基本項目は、HACCPのほかにも「5S」と呼ばれている項目があります。5Sとは、以下の5つの要素です。

  • 整理:不要なものを処分すること
  • 整頓:ものの定位置を決め、必要なものを必要なタイミングですぐに取り出せるようにすること
  • 清掃:常に汚れや異物、ゴミを取り除けるようにすること
  • 清潔:施設・設備・身だしなみなど、微生物学的に清潔なレベルに保つこと
  • しつけ:上記の4Sを習慣化すること

なお、最近では5Sに「殺菌」と「洗浄」を加えた「7S」にも注目が集まっています。殺菌では有害となる微生物類を除去したり、増殖を抑制したりする重要な項目です。そして、洗浄は作業環境や設備の汚物を除去します。

2.衛生管理の実施方法

ここでは、衛生管理の実施方法を解説します。

衛生管理計画書を作成する

まずは、衛生管理計画書を作成します。衛生管理計画書とは、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で必要になる計画書です。これまでの一般衛生管理で管理する一般衛生管理項目のほか、HACCPで管理する重要管理項目を記載します。衛生管理計画書を作成する場合は、事業所ごとに一般衛生管理と重要管理点を定めることが大切なポイントです。たとえば、加熱温度と急速冷却時間、原材料の管理、従業員の手洗いなどが含まれます。事業所ごとに定めた一般衛生管理と重要管理点を、しっかりと衛生計画書にまとめることが大切です。

衛生管理計画を実行する

次に、作成した衛生管理計画書に基づき、日々の衛生管理に取り入れます。なお、日々の衛生管理に計画内容を取り入れる際は、従業員に対する指導が必要不可欠です。食品工場で働く従業員すべてに共有するのはもちろんのこと、教育訓練が重要なポイントとなります。衛生管理計画を立てたとしても、食品工場で定着しなければ意味がありません。特に、食品工場では生産性の向上が優先されることが多いので、衛生管理を重視するためにも製品の安全性が確保しやすくなります。

衛生管理計画を記録し保管する

衛生管理計画の実行を確認した後は、その記録と保管を行います。その記録は、正確に衛生管理が行われていることを証明するために重要です。保健所の営業許可や定期的に行われる監査では、衛生管理の記録が調査されるでしょう。そこで、しっかりと衛生管理の記録が提示できれば、疑われることなく食品製造がスムーズに進みます。衛生管理計画を記録した後は、その記録したものを適切な場所で保管することが大切です。

衛生管理計画の振り返り・改善を行う

食品工場における衛生管理は、ただ単に実行して終わりではありません。日々の衛生管理に取り入れた後は問題が起きていないか、食品事故の予防になっているかを定期的にチェックする必要があります。実行した衛生管理計画が食品事故につながる場合は、衛生管理計画自体の見直しが不可欠です。見直しと改善をくり返し行うことで、より効果的な衛生管理計画が実施できます。

3.衛生問題を予防するための戦略

ここでは、衛生問題を予防するための戦略について詳しく説明します。

一般衛生管理で押さえておきたいポイント

衛生問題を予防するための戦略として、一般衛生管理で押さえておきたいポイントがいくつかあります。それぞれのポイントについて、詳しくチェックしていきましょう。

外部からの汚染対策

食品工場の衛生管理でHACCPを導入する際、外部からの汚染対策も重要なポイントです。工場の立地や周辺環境によっては、異物や汚物が食品製造の過程で混入しやすい傾向があります。特に、気をつけておきたいのは害虫対策です。ネズミやゴキブリなどの害虫が工場内に侵入すると、食品の安全性が損なわれてしまいます。原材料を搬入したり、段ボールに害虫や有害微生物が付着したりしないようにするためにも、外部からの汚染対策を徹底しましょう。

食品製造に使用する器具の洗浄や消毒

食品工場では、製品を製造する際にさまざまな設備や器具を用いることになります。その器具類が汚染されている状態だと、異物混入や食中毒のリスクが高まるので注意が必要です。適切なタイミングで器具を洗浄し、キレイにした後は消毒と殺菌も忘れずに行いましょう。器具類をしっかりと消毒し、殺菌をしておけば菌やウイルスによる食中毒が防げます。また、器具の洗浄・消毒・殺菌は、ルールを設けることも重要です。従業員にルールを周知し、管理を徹底しましょう。

クロスコンタミネーションの防止

二次汚染と交差汚染こと、クロスコンタミネーションを防止することも衛生管理で押さえておきたいポイントとなります。クロスコンタミネーションとは、病原菌など汚染度が高いものから汚染度の低いものに接触することで広がる汚染です。食品工場においては、人や器具から食品に菌やウイルスが移ってしまうことがよくあります。クロスコンタミネーションを防ぐには、食材を適切な場所で保管したり、従業員の手洗いや消毒を徹底したりするなどの工夫が必要です。

重要管理で押さえておきたいポイント

一般衛生管理だけでなく、重要管理で押さえておきたいポイントもあります。重要管理のポイントは、各工場や事業場によって異なるので注意が必要です。

取り扱う食品に合った管理方法が重要

前述したように、食品工場の重要管理では、その食品工場で取り扱う食品に合わせる必要があります。具体的には、取り扱う食品の調理方法に合わせた重要管理を行いましょう。たとえば、非加熱のまま提供するか、加熱して提供するかでは、リスクが大きく異なります。それぞれの工程で食品事故のリスクがある箇所をピックアップし、そのポイントごとに適切な対策を施すことが大切です。

各工程を徹底的に見直す

重要管理では、加熱・冷却・保存などの各工程を徹底的に見直すことも大切なポイントです。正しい方法で加熱されているか、適切な温度で冷却されているか、保存環境が整っているかなど、各工程を見直しましょう。少しでも不適切な箇所がある場合、食中毒のリスクが高まります。特に、加熱・冷却時の温度やルールは食中毒のリスクを軽減する要素になるため、徹底的にチェックすることが大切です。

4.衛生管理の成功事例

ここでは、衛生管理の成功事例をいくつか紹介します。

より高い品質が確保できる設備の導入

食品工場では生産性の向上も大切ですが、消費者の信頼を得るための品質維持と向上も重要なポイントとなります。製品を製造するための食材にこだわるだけでなく、製造に使用する設備や機器自体も高い衛生状態を保つ必要があるでしょう。古い設備や機器は劣化しやすく、異物混入の原因になりかねません。定期的に設備を更新している食品工場も多く、より高い品質が確保できる設備の導入を検討する必要があります。

衛生管理の見える化

2018年の食品衛生法改正をきっかけに、HACCPを導入した食品工場の成功事例です。HACCPに対応した基準づくりはもちろんのこと、衛生管理の見える化に焦点を当てました。インターネットの活用で衛生管理の記録を一元管理できたほか、その食品工場では最終的にはすべてのデータが集約されることを目指しているそうです。衛生管理を見える化することでタブレット端末からでも衛生点検ができるようになり、リアルタイムで衛生状況が確認できるようになりました。

食品業界でも推進されているDX

最近では、食品業界でもDXが推進されています。DXとは、AIやIoTといったデジタル技術を活用してビッグデータを管理したり、業務プロセスを改善したりすることです。食品工場でDXを推進することで人手不足が解消できるほか、品質管理がしやすくなるというメリットがあります。食品を製造する各工程をDXで管理し記録を保存しておけば、何らかの問題が生じたとしてもすぐに原因究明と対策ができるというわけです。

5.食品工場の衛生管理に関してよくある質問

食品工場の衛生管理に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.なぜ衛生管理が必要なのか?
A.口に入る食べ物は、何よりも安全・安心が第一です。安全・安心が確保された上でおいしく食べることができるか、適切な価格で提供されているかに注目されます。つまり、安全・安心な食品を消費者へ提供し続けられるようにすることが、食品工場における重要なポイントです。衛生管理は、安全・安心な食品を提供するには欠かせない要素となります。

Q.衛生管理計画書を作成するポイントは?
A.まずは、厚生労働省の手引書を参考にしてください。手引書を参考にしながら、各事業場や食品工場で取り扱う食品関連の危害要因を把握します。また、衛生管理計画書を作成する際は、一般衛生管理と重要管理の2種類を作成することも大切なポイントです。さらに、重要管理の記載項目を決める際は、食品工場で働いている従業員とのコミュニケーションも必要になります。

Q.従業員の教育で大切なことは?
A.基本項目となるHACCPや5Sの理解はもちろんのこと、各工程の製造手順や記録方法を周知することも大切なポイントです。なぜHACCPや5Sを理解する必要があるのか、その重要性を従業員へ伝える必要があります。組織全体で衛生管理への理解が深められれば、製品の安全性と品質が確保しやすくなるでしょう。

Q.HACCP対応の工場を新しく建てる際のポイントは?
A.工場の周辺環境、掃除のしやすさ、設備、動線計画に注目することです。食品工場を建設する予定地の周辺はどのような環境になっているのか、害虫や外部汚染のリスクはないか、確認しておきましょう。また、異物混入を防ぐための動線計画、清潔な環境を維持する掃除のしやすさに注目することも大切です。さらに、使用する設備の導入や設置も考慮しましょう。

Q.新しい設備を導入する際の注意点は?
A.設備メーカーの選び方に注意しましょう。導入する設備が決まっている際は、できるだけその設備に詳しい専門メーカーに依頼するのがおすすめです。専門メーカーに依頼したほうが、要望や予算に合った設備が導入できます。

まとめ

いかがでしたか? 食品工場における衛生管理は食品事故を防ぎ、安定した品質を提供するために不可欠です。HACCPや5Sといった食品衛生の基本をチェックした上で、取り扱う食品に合った衛生管理を行う必要があります。なお、衛生管理の実施方法として、新しい設備に交換するのも方法の1つです。三丸工業機械では、さまざまな種類の高圧式ホモジナイザーを扱っています。導入を検討している方は、ぜひ一度お問い合わせください。