工場で衛生管理が重要な理由は? 衛生管理におけるルールや注意点

工場の衛生管理がなっていないと、製品に異物が混入したり作業環境がどんどん悪くなったりする恐れがあります。たくさんの従業員が働く場所だからこそ、衛生管理はきちんと徹底しておかなければなりません。けれども、どうすれば衛生管理を維持し続けられるのか、悩んでいる方は多いでしょう。

そこで、本記事では、工場で衛生管理を徹底するポイントなどについて解説します。

  1. 工場で衛生管理が必要な理由は?
  2. 工場の衛生管理にはどんな項目があるのか?
  3. 従業員に徹底するべきルール
  4. 工場の衛生管理における注意点
  5. 工場の衛生管理に関してよくある質問

この記事を読むことで、工場における衛生管理の重要性や注意点なども分かります。悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

1.工場で衛生管理が必要な理由は?

最初に、工場で衛生管理が必要な理由をチェックしておきましょう。

1-1.ものを作る工場において必要不可欠なもの

衛生管理はもの作りを行う工場において必要不可欠なものです。そもそも、衛生管理とはどのようなものなのか、具体的な意味を把握している方は少ないと思います。簡単に説明すると、衛生管理とは労働者や消費者を災害や疫病から守ることを目的としており、その目的を果たすために必要な処置を行うことです。工場においては、その場で働く従業員の安全はもちろん、そこで生み出す製品の危険要因を把握し、適切に管理することを指しています。正常に工場を運営し続けるためには、衛生管理の徹底が必要です。

1-2.工場で起こり得る災害を防ぐため

工場ではどのような事故がいつどこで発生するのか分かりません。重大な事故が起きてしまうと、人命や工場の運営にも関わることになるでしょう。衛生管理は工場で起こり得る災害を防ぐための意味も含まれているのです。工場で使用している機械に異常はないか・きちんと正常に製品を生み出しているのか・従業員にとって働きやすい環境になっているのかなどを日々チェックすることになります。事故を未然に防ぐためにも、衛生管理はとても大切なことなのです。

1-3.食品工場での安全性

衛生管理は、特に食品工場においてとても重要なものだとみなされています。食品工場では、消費者の口に入れるものを生産しているので、そこに異物が入り込んだりウイルスが入ったりしてしまえば大ごとです。衛生管理がきちんとなっていない工場は不清潔な状態ですし、その状態で生産した食品を消費者へ届けてしまいます。正社員以外にもパートやアルバイトなどたくさんの人たちが出入りするからこそ、衛生管理は全体で徹底していかなければなりません。

2.工場の衛生管理にはどんな項目があるのか?

ここでは、工場の衛生管理にはどのような項目があるのか、詳しく説明します。

2-1.衛生管理の基本となる3項目

衛生管理の基本になるのは、健康管理・服装規定・手洗いの3項目です。特に、食品衛生においては、細菌をつけない・細菌を増やさない・細菌をやっつけるの3原則を遵守しなければならないとされています。
健康管理においては、その工場で働く従業員に腹痛や発熱など異常がないかどうかを自身でチェックすることです。責任者が1人1人チェックするのは困難ですし、自分の体のことは自分だけしか分かりません。また、健康保菌者の早期発見のために検便をすることもあります。
服装規定は、職場で着るユニフォームを規定どおりに着用することです。清潔で衛生的なものを身につけることが基本ですし、職場外に出るときはユニフォームのままでいることを避けなければなりません。髪の毛を整え、爪が伸びていないことも確認が必要です。
手洗いは細菌を工場内に持ち込まないために必要不可欠な衛生管理となります。仕事を始める前はもちろん、トイレの後などもしっかりと洗浄・消毒の手洗いを行うことが大切です。二次汚染を防ぐためにも、手洗いが必要なこととなります。

2-2.整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5S

工場だけでなく、多くの職場で共通していえる衛生管理が「5S」です。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つで構成されています。それぞれの意味は以下のとおりです。

  • 整理:必要なものと不要なものを区別し、不要なものを捨てること
  • 整頓:必要なものを使いやすいように置くこと
  • 清掃:職場や機器をきれいに掃除して点検も行うこと
  • 清潔:整理・整頓・清掃を意識して、清潔な状態を保ち続けること
  • しつけ:整理・整頓・清掃・清潔を守るように習慣づけること

上記の5Sを徹底させることで、作業環境が改善するほか、安全面も向上します。従業員が安心して働ける職場環境は、自然と製品の質も上がるものです。

2-3.拭取検査も大切

食品工場の衛生管理において、とても重要な項目になるのが食中毒の防止です。食中毒の原因になる微生物は、目で確認できないほど小さなものとなっています。そのため、目に見えない微生物を確認するために行うのが、拭取検査です。拭取検査は洗浄と消毒の効果を確かめる科学的方法となります。主に、細菌検査とATP測定による洗浄度検査を行うことになり、洗浄・消毒後の手指や調理器具にどのくらいの微生物が存在しているのか確認することができるのです。

3.従業員に徹底するべきルール

ここでは、従業員に徹底するべきルールをいくつか紹介します。

3-1.手洗いを徹底させる

もの作りを行う工場において、必ず徹底しておかなければならないのが手洗いです。特に、食品衛生は手洗いに始まり、手洗いに終わるといわれているように、手洗いが食中毒を予防する基本となります。微生物は人の手を介して二次的に汚染が広まりやすい傾向にあるため、微生物が付着しただけでも食中毒は起きてしまうものです。なぜ手洗いが必要なのか、その重要性を従業員全員が理解し、徹底させていかなければなりません。なお、日本食品衛生協会が推奨する手洗いの手順は以下のとおりです。

  1. 流水で手を洗う
  2. 洗浄剤を手に取る
  3. 手のひら・指の腹面を洗う
  4. 手の甲・指の背を洗う
  5. 指の間・股(付け根)を洗う
  6. 親指と親指の付け根のふくらんだ部分を洗う
  7. 指先を洗う
  8. 手首を洗う(内側・側面・外側)
  9. 洗浄剤を流水でよく洗い流す
  10. 手を拭き乾燥させる
  11. アルコールによる消毒をする

3-2.工場内に入るときと出るときのルール

微生物やウイルスなどは外から入り込んでくるものなので、工場に入るときと出るときのルールも徹底しておかなければなりません。特に、従業員が工場内に入るときは、自分の体についているホコリや毛髪などが知らない間に食品の中に入ってしまう恐れがあります。そのため、工場内に入るときと出るときは厳重な準備とチェックが必要です。たとえば、工場の入り口で粘着ローラーを使ったり、エアシャワーでホコリや毛髪を除去したりするなどがあります。これらの行為を、衛生管理のルールとして徹底させておきましょう。

3-3.従業員に対する教育も必要不可欠

衛生管理においては、従業員に対する教育も必要不可欠なことです。なぜ手洗いが必要なのか・なぜ衛生管理が重要なのかを理解しておかなければ、従業員1人1人が衛生管理のルールを遵守してくれません。理解を深めるためにも、衛生管理者や工場の責任者などがすすんで取り組むことが大切です。また、労働者が自身の健康状態を維持できるように、健康する相談や衛生教育も行う必要があります。

4.工場の衛生管理における注意点

ここでは、工場の衛生管理における注意点を解説します。

4-1.組織の連携を高めることも忘れずに

衛生管理のルールを徹底させるためには、組織の連携を高めることが大切です。たとえ、衛生管理者が呼びかけても、工場のトップがやる気を見せなかったり従業員同士の連携が取れていなかったりすると、衛生管理を維持し続けることができません。個人だけでなく部門によってもやり方が異なれば、組織として連携しにくくなってしまいます。工場は連携が大切な部分もあるので、衛生管理のルールを組織内で共有できるようにしておくことが大切です。まずは、それぞれの部門で5Sを徹底することを目指せば、自然と部門同士の連携もしやすくなるでしょう。

4-2.常に現場の意見を聞き、改善する

衛生管理は一度行ったらそこで終わりではありません。常に進化し続けていかなければならないので、工場で働いている従業員から現場の状況を聞き、把握することが大切です。基本的な衛生管理のルールは変えずに、現場の状態によって改善すべき点を改善していきます。どのようなところに不便を感じているのか・問題が起こっているのか瞬時に把握でき、事故を未然に防ぐこともできるでしょう。そのためには、従業員にとって風とおしのいい職場環境を作っていかなければなりません。従業員と責任者とのコミュニケーションも忘れないでください。

4-3.工場で使う機器のメンテナンスも大事

工場ではさまざまな機器を扱っていると思います。これらの機器を使ってものを生み出しているので、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。メンテナンスを怠ってしまうと、機器が急に故障したりヒューマンエラーが起こりやすくなったりするなど、製造ラインが止まる恐れがあります。そのようなことにならないためにも、工場で使用する機器の異常を素早く発見するためのメンテナンス・点検が必要なのです。

5.工場の衛生管理に関してよくある質問

工場の衛生管理に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.衛生管理者とは?
A.事業場の衛生全般を管理する者を衛生管理者といいます。労働条件・労働環境の衛生的改善と疫病の予防処置などを担当している専門家です。一定規模以上の事業場に関しては、衛生管理者を必ず選任しなければなりません。衛生管理者がいるからこそ、作業環境が安定し労働者の健康管理もきちんと行うことができます。少なくとも週に1回は作業場などを巡視し、衛生状況に有害の恐れがあるときはすぐに必要な処置を取らなければなりません。

Q.衛生管理を行う前にやるべきことは?
A.衛生管理の目的を明確にすることです。きちんと目的を明確にせずに衛生管理を行う工場が多いのですが、それではきちんとルールや5Sを従業員に根づかせることができません。何のために5Sを徹底するのか・なぜ衛生管理が必要なのか目的をハッキリさせておくことで、従業員同士が意識を高めることができます。また、衛生管理の意識を高めるには、目的を明確にすることはもちろん、責任者から働きかけることが重要なポイントです。

Q.工場内を清潔に保ち続けるためのコツは?
A.5Sの中でも整理整頓の意識を高めることです。たとえば、食品工場の場合、異物混入がヒューマンエラーの中で最も多いとされています。テレビでも異物混入のニュースを耳にしたことがある方は多いはずです。いくら気をつけていても異物が混入してしまう可能性はあります。だからこそ、混入の恐れがあるものは製造現場に置かない・代替品を考えるなどして、リスクを抑えることが大切です。備品の数や置き場所はきちんと決めて、共有しておきましょう。

Q.従業員を教育する際のポイントは?
A.丁寧に分かりやすく説明することが大切なポイントです。特に、新人従業員に作業工程を教えるときは、実際にやってみせたり、言って聞かせたり、その場でやらせてみせたりすることで作業を覚えます。どのような工程でどのような効果が得られるのかしっかりと説明することで、新人従業員も作業の必要性を1つずつ理解できるというわけです。

Q.新しい機器を導入する際の注意点は?
A.どのようなサービスを展開しているのか・技術相談などを受けつけているかなどをチェックしておきましょう。工場の機械を販売している業者は、それぞれ強みがあります。どのような機器を販売しているかによって、業者ごとの特徴や強みが分かるでしょう。なお、高圧式ホモジナイザーの専門メーカーである三丸機械工業では、技術相談も受けつけているので悩んでいる方はぜひ一度ご相談ください。

まとめ

工場はたくさんの人が働いており、さまざまな機器や道具を使う場所でもあります。衛生管理をきちんと根づかせておかなければ、事故が起きたり従業員の健康状態が悪くなったりする恐れがあるでしょう。従業員が安心して働けるためにも、常に清潔な工場を維持し続けるためにも衛生管理が必要不可欠です。衛生管理のルールを徹底させるためにも、責任者からすすんで取り組むことを心がけましょう。