工場の整理整頓を成功させるコツは? 重要な理由やポイントなど解説

「工場の整理整頓がうまくいかない」「どうすればきれいな状態を維持し続けられるのか?」など、工場の整理整頓で悩んでいる方は多いでしょう。製品を作り出している工場は、整理整頓が商品の品質にも大きく関わってくる大切なポイントです。どこに何があるのか把握しきれていない工場は、商品の質が落ちたり、ヒューマンエラーにつながったりする恐れがあります。では、どうすれば整理整頓された工場が維持できるのでしょうか。

本記事では、工場の整理整頓を成功させるコツを解説します。

  1. 工場の整理整頓が重要な理由は?
  2. 工場の整理整頓を成功させるコツ
  3. 整理整頓された工場を維持させるポイント
  4. 工場の整理整頓に関してよくある質問

この記事を読むことで、整理整頓された工場を維持するためのポイントなどが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。

1.工場の整理整頓が重要な理由は?

まずは、工場の整理整頓が重要な理由をチェックしておきましょう。

1-1.安全管理が何よりも最優先すべきこと

商品を生み出し、さまざまな機械を扱う場所である工場は、何よりも安全管理を優先すべき場所です。安全管理がなされていない=整理整頓がなっていないとみなされ、その結果、ケガや人身事故につながるリスクが高まります。実際に、事故が起きた工場は、何がどこにあるのか・どのような機械を管理しているのか把握しておらず、現場作業がゴチャゴチャになっているケースがほとんどです。重大な事故が発生した場合、そのまま何もなかったように製造を続けることはできません。だからこそ、工場の整理整頓をして、問題を見つけ改善しては事故を未然に防ぐことが大切です。

1-2.整理整頓が作業の効率化アップへ

工場の整理整頓が必要な理由は、作業効率や生産効率のアップが大きく関係しています。整理整頓は、不要なものを捨てて必要なものをきちんと管理することです。無駄を徹底して排除することで、作業効率と生産効率のアップにつながります。つまり、整理整頓を心がけることで商品ロスの無駄をなくし、作業スペースの確保をして正確性をあげることができるというわけです。また、必要なものを探す手間も省けるため、従業員それぞれが作業に集中できるでしょう。自然と気持ち的にもゆとりが生まれ、いい製品を生み出すことができます。

1-3.ヒューマンエラーが増えてしまう

工場の整理整頓を徹底する目的は、ヒューマンエラーをなくすことにもあります。ヒューマンエラーだけでなく、工場で起こりやすいトラブルを少なくするためには、整理整頓の徹底が必要です。整理整頓がされていない環境では、従業員も作業に集中できず、問題を起こしてしまいます。工場のラインに少しでも異変が起きてしまうと、生産のすべてがストップしてしまうことになるのです。ほんのわずかなことでも大きなトラブルになり兼ねないので、従業員が集中して作業しやすい環境を整えなければなりません。

1-4.工場が整理整頓できない原因はさまざま

なぜ工場が整理整頓を維持し続けられないのでしょうか。その原因は工場によってさまざまですが、主な原因は以下のようになっています。

  • 不要なものが増える原因がつかみきれていない
  • 管理職の人が現場に丸投げしている
  • 製造現場に任せきりにしている
  • そのほかの置き場を放置している
  • ルール決め・習慣化されていない

不要なものをなくしても、要らないものが増える原因をつかみきれていなければ再び要らないものが増えてしまいます。また、管理職の人が現場に丸投げしていたり、すべてを任せきりにしたりする状況もアウトです。主に使う道具の置き場所を決めていても、そのほかに分類しているものの置き場所を放置していると、整理整頓ができなくなってしまいます。そして、ルール決めや習慣化がなっていない・従業員の間で認識されていないケースも整理整頓ができない原因です。

2.工場の整理整頓を成功させるコツ

それでは、工場の整理整頓を成功させるコツをいくつか紹介します。

2-1.不要なものを捨て、必要なものは置き場所を決める

整理整頓の基本は、不要なものを捨てて必要なものは置き場所を決めることです。きちんとしていても、さまざまな人が作業をしている工場内ではいつの間にかあやふやな状況になってしまいます。だからこそ、定期的に不要なものを捨てて、必要なものは何なのか・どこに何を置くのか明確に決めておかなければなりません。また、必要なものの置き場所を決めたら、きちんと従業員同士で認識し合うことも大切なポイントとなります。

2-2.工場の整理整頓で必要な「5S」

工場の整理整頓で必要な「5S」というものをご存じでしょうか。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの項目を表しています。それぞれの意味は以下のとおりです。

  • 整理:必要なものと不要なものを区別し、不要なものを捨てること
  • 整頓:作業しやすいように並べたり、ラベル表示などを分かりやすくしたりすること
  • 清掃:ゴミや汚れを取り除いたり、メンテナンスをしたりすること
  • 清潔:整理・整頓・清掃などを徹底し、きれいな状態を保つこと
  • しつけ:ルール決めや習慣化

上記の5Sを実行している工場や会社は少ないといわれています。現状をきちんと把握し、改善すべきところや問題点を見つけるところから始めてみてください。少しずつの努力が大きな成果へとつながります。

2-3.5Sを取り入れる前に整理整頓の計画を立てる

前述した5Sを取り入れる前に、整理整頓の計画を立てることも成功させるポイントの1つです。いきなり整理整頓を始めると周囲がついていけなくなり、失敗に終わってしまいます。まずは、整理整頓を「いつ」「どの場所を」「誰が」「どんなものを」「どうするのか」と計画を立てることが大切です。また、実施するときは上層部だけでなく、現場で働いている従業員の意見を取り入れながらも、どのような点に注意するのか話し合いを重ねましょう。そして、実施後から必ず反省会を行うことで、気がついたことなどがフィードバックできます。より最適な整理整頓の計画を立てることができるというわけです。

2-4.不要なものをチェックする

最初に不要なものを処分するといいましたが、現場にどんなものが要らないのか見極めることが大切です。整理整頓を始める前に不要なものをまとめて処分したり整頓したりしてしまうと、後で「やっぱり必要だった」という状況になってしまう恐れがあります。5Sを実行するときは、必ず整理から始めるように心がけましょう。そして、不要なものの判断は1人で行うのではなく、5~6人といった複数人で行うのがポイントです。そうすることで複数の価値観で判断ができますし、ほかの人の作業空間と相対的に見比べることもできるでしょう。

2-5.整頓は見える化を意識する

整理整頓を成功させるポイントとして、整頓は見える化を意識することがあります。整頓の際は、ものの置き場所を1つずつ決めることになりますが、その際は使用頻度・ジャンル・大きさで分けるのがポイントです。たとえば、ものを使う場所の近くに置き場所を決めることで、その道具を取りに行くまでの時間が節約できます。そして、置き場所を決めると同時に、自分以外に人でも整頓ができるように「見える化」をしてください。参考としては、どの場所に何があるか分かる保管マップを作る方法があります。保管マップを確認すれば、誰でも置き場所がひと目で分かるでしょう。

2-6.5S活動の時間を作る

5S活動を行う時間を作るのも、整理整頓を成功させる大切なポイントです。たとえば、毎日5Sの活動時間を数十分でも確保するだけでも大きな違いが生まれます。自分の作業範囲を整理整頓するだけでも快適な職場環境が整うように、毎日続けることはとても大きな効果につながるのです。また、5Sを実行しなかったときは後から時間をロスする可能性についても、従業員や上層部の間で共通認識ができるようになります。つまり、これが5Sでいう「しつけ」にあたるのです。全員で意識を確認し自ら率先して実行できるようになることが、整理整頓しやすい環境といえるでしょう。

3.整理整頓された工場を維持させるポイント

ここでは、整理整頓された工場を維持させるポイントを解説します。

3-1.使ったものを戻させる改善を

きちんとものの置き場を決めていてもすぐにゴチャゴチャになる工場は、使ったものを戻させる工夫が足りていない証拠です。使ったものを戻させる改善ができていれば、整理整頓された状況を維持し続けることができるでしょう。そこで、役立つのが形跡整頓です。形跡整頓の方法としては、以下の手順を参考にしてください。

  1. 置いてある工具などの輪郭をなぞり、それに沿ったラインや抜き型を作る
  2. 工具を持ち出してもそこに何があったのか分かるようにする
  3. 工具を持ち出すときは名札を置き、誰が持ち出したのか分かるようにする

上記の流れで改善すれば、誰が持ち出したのか・何が持ち出されているのかひと目で分かるようになります。戻すべきものと場所がひと目で分かる見える化になっているからこそ、迷わずにもとの場所に戻すことができるのです。

3-2.上層部自ら動き出すことが大事

整理整頓された状況を維持し続けるためには、従業員のモチベーション維持が重要なポイントでもあります。前述したように、上層部や管理者が「きれいにしなさい」と従業員に伝えるだけでは、一向に職場が改善できません。整理整頓された工場にするためには、上層部や管理者自らが動き出す姿勢を見せることが大切です。実際に、現場を訪れて従業員の話を聞くのも有効でしょう。定期的に現場をチェックすることで、そこで働いている人たちと協力し合いながら、整理整頓された工場を維持するための努力に励めるはずです。

4.工場の整理整頓に関してよくある質問

工場の整理整頓に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.置き場のロケーションとは?
A.ロケーションとは所番地のことです。ものの置き場所を決めたら、その場所がどこか分かるようにロケーションを決めなければなりません。たとえば、工場の中に区画を決めて、そこに東西南北や縦横で分かれた通し番号を振り分けます。そして、ロケーションを決めたところに棚・置き場を設置してください。また、棚にも棚版を振り分けることで、誰が見てもどこで何が置かれているのか一目瞭然でしょう。

Q.人と組織を高めるために必要なことは?
A.目標設定・活動基準・ルールを設定することです。組織で整理整頓の取り組みを始める場合、やる気だけではうまくいきません。仕事と同じように、具体的な目標設定が必要となります。目標設定や活動の基準・ルールを設定し見える化することで、すべての従業員も認識できるでしょう。もちろん、活動を推進するための先導者も必要で従業員が整理整頓の必要性を認識しなければなりません。

Q.5S改善のアイデア事例は?
A.工場で使うことが多い治工具の5S改善アイデアを1つ紹介しましょう。治工具は箱に入れたまま積み上げてしまいがちですが、その状態だと中身が分からずに取り出す時間や手間がかかってしまいます。この場合は、治工具をすべて平置きにしてサイズ別に区画線で仕切るといいでしょう。また、縦に並べてラベルの色で仕分ける方法もあります。

Q.不要なものの判断で迷ったときの対処法は?
A.迷うものは保留期間を決めることをおすすめします。保有期間を決めることで、必要なものか必要なものでないのか判断がしやすくなるでしょう。すぐ使わないもの・いつか使うものなど、毎日使わないものが不要なものの対象になることが多いと思います。ものをいつ使うかを明確にすることで、本当に必要か判断できるでしょう。

Q.機械のメンテナンスも整理整頓に必要なことか?
A.5Sの清掃にもあるように、工場で使う機械のメンテナンスも整理整頓において大切な要素といえるでしょう。きちんとメンテナンスされていなければ、安心してその機械を使うこともできません。また、急に故障したり、製造ラインが使えなくなったりする恐れも出てくるでしょう。製造ラインを維持し続けるためにも、機械のメンテナンスは必要不可欠です。

まとめ

工場の整理整頓を成功させるコツは、まず現在の状況を把握することです。現在の工場がどのような環境になっているのか・どこにも問題があるのかも明確にしてください。現状をしっかりと把握することで、自分たちがすべきことが見えてくるでしょう。また、工場だけでなくどの職場にも必要な「5S」を意識することも大切なポイントです。誰が見てもどこに何が置いてあるのか分かる環境こそが、整理整頓された環境といえるでしょう。