化粧品に入っている乳化剤は本当に危険なの? その真実を紹介します!

「化粧は女性の身だしなみの一部」といわれています。また、直接肌につけるものですから、「できる限り安全なものを使いたい」と考えている方は多いでしょう。「化粧品 安全」でインターネットを検索すると乳化剤の危険性を解説しているサイトがいくつもヒットします。本当に乳化剤は危険なのでしょうか?

そこで今回は、化粧品と乳化剤についてご説明します。乳化剤が果たす役割についてもご説明していきましょう。乳化剤について詳しく知りたいという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

  1. 乳化とは?
  2. 乳化剤とは?
  3. 乳化剤が果たす役割は?
  4. 乳化剤は本当に危険なのか?
  5. 手作り化粧品には気をつけよう

1.乳化とは?

乳化剤とは、物質と物質を乳化させる性質を持つものです。といっても、ほとんどの方が「なんのこと?」と首をかしげられると思います。乳化剤を説明する前に、まずは乳化についてご説明しましょう。物質には混じりあうものと、混じりあわないものがあります。混じりあわないものの代表例が水と油。水の上に油を落としても、油は玉になって水面に浮かぶだけです。しかし、油と水が入った容器に刺激を与えると、一時的に水と油が混じりあいます。

油と酢が主な原料のドレッシングを使用前によく振るのはこのためですね。このように一時的に水と油が混じりあう現象を「乳化」といいます。しかし、この乳化した物体はしばらくするとまた水と油に分離してしまうのです。ドレッシングなら使うたびに振ればよいのですが、中には「分離しては困る」というものも多いでしょう。

2.乳化剤とは?

乳化剤とは、水と油のように放っておくと分離してしまうものをずっと乳化しておく性質を持った物質です。一例をあげると、卵。ドレッシングの主成分である水と油は、放っておけば分離したままでしょう。しかし、そこに卵を加えると水と油は混じりあったままになり、マヨネーズができるのです。このような乳化は、食品だけでなく医薬品や燃料、洗剤などさまざまなところで行われています。

3.乳化剤が果たす役割は?

では、化粧品にはなぜ乳化剤が使われているのでしょうか? この項では、なぜ化粧品に乳化が必要なのかということをご説明します。

3-1.昔の化粧品は体に毒だった!?

化粧の歴史は古く、古代エジプトではすでに目の周りを黒く縁(ふち)取るアイラインが使われていました。日本でも、平安時代にはおしろいや口紅が登場しています。しかし、「人の肌に美しく色をぬる」ということは大変難しいのです。人間の肌には脂分がありますから、水性のものでは落ちてしまいます。

現在の化粧品を使っても、脂分が多い額や鼻筋は化粧が落ちやすいのです。そこでなんとか化粧ののりをよくしようと、さまざまな物質が混ぜられたおしろいが登場しました。その中には、水銀や鉛といった人体に有害なものも多かったのです。

3-2.乳化が果たす役割は?

現在の化粧品も、香料や美容成分、顔料などいろいろな物質を混ぜて作られています。それに、化粧品はファンデーションやマスカラ、口紅だけではありません。化粧せっけんやシャンプー、洗顔料、メイク落としも化粧品の一種です。乳化剤を使った化粧品は、水性と油性の物質が程よく混じりあっていますから、肌の上でよく伸びて落ちにくいでしょう。市販されているクリームや乳液タイプの化粧品は、ほとんどが乳化剤入りです。

また、乳化剤入りの化粧品は成分が肌に浸透しやすくなっています。ですから、美容液などにも使われているのです。さらに、乳化剤はメイクを落とす役割もあります。せっけんやメイク落としの中に入っている「界面活性剤」というのは、乳化剤とほぼ同じもの。

そして、乳化剤が入っている化粧品は品質が変化しにくいのです。現在、市販されている化粧品が何か月も保存できるのは防腐剤がたくさん入っているからではありません。防腐剤とともに入っている乳化剤のおかげです。

3-3.化粧品に使われている乳化剤の種類は?

化粧品に使われている界面活性剤は「イオン性界面活性剤」という種類です。また、化学合成されたものと、天然由来のものがあります。乳化剤というといかにも化学物質の塊のようなイメージを持つ方もいますが、前述した卵のように天然由来の成分でも乳化剤の役割を果たす物質があるのです。ちなみに、せっけんや洗剤といった「汚れを落とす」役割を果たすものは界面活性剤(乳化剤)なしでは作れません。

4.乳化剤は本当に危険なのか?

さて、ここまで記事を読んでいただければ、乳化剤なしでは作れない化粧品がたくさんあることは、お分かりいただけたと思います。では、本当に乳化剤は危険なものなのでしょうか? 最後に、乳化剤と健康についてご説明していきます。

4-1.肌はとてもデリケートである

私たちの肌は、とてもデリケートです。年代によっても変化していきますし、外界に一番多く接している部分なので、気候などの影響も受けやすいでしょう。さらに、皮膚も呼吸しています。体内に毒素がたまると皮膚にある毛穴から空気とともに排出されるため、体調が悪いと肌荒れもおこりやすいのです。ですから「毎日使っている化粧品が突然肌に合わなくなった」というケースも珍しくありません。

また、人によって化粧品との相性は異なります。テレビで盛んにCMが流れている化粧品でも、肌に合わない方はいるでしょう。

4-2.悪いのは本当に乳化剤なの?

乳化剤は化粧品の成分が、肌に浸透しやすくなる役割も担(にな)っています。ですから、乳化剤ありの製品と乳化剤なしの製品では、乳化剤ありの製品の方がより肌に影響がでやすいでしょう。だからといって、「乳化剤が入っている化粧品は危険だ」といいきるのは乱暴です。乳化剤にもいろいろな種類があります。

乳化剤を「危険」と主張しているサイトの中には、「でもこの化粧品ならば、天然由来の乳化剤を使っているので安全」と宣伝につなげているところもあるのです。しかし、「天然由来の成分」がすべて安全だとは限りません。化粧品を使っていて肌が荒れた場合は、すぐに「乳化剤のせい」と決めつけずに皮膚科を受診してください。病気が原因の可能性もあるのです。

4-3.手作り化粧品には気をつけよう

せっけんやクレンジングクリームのように、界面活性剤(乳化剤)なしでは作れない化粧品もありますが、化粧水のように乳化剤なしで作れるものもあります。肌が敏感で、市販の化粧品が使えないという人の中には、化粧品を手作りする人もいるでしょう。

ただし、手作り化粧品の寿命はとても短いです。腐敗した化粧品を使えば、肌の状態は悪化してしまうでしょう。ですから、手作りの化粧品を使う場合は少量ずつ作り、冷蔵庫などで保管してください。また、手作り化粧品をむやみに配ったり販売したりしてもいけません。

おわりに

今回は、化粧品に使われている乳化剤についてご説明しました。

まとめると

  • 乳化剤があるからこそ、高品質な化粧品ができる。
  • 肌はとてもデリケートなので、ある日突然化粧品が肌に合わなくなることもある。
  • 乳化剤を危険と断言することはできない。
  • 手作りの化粧品は保管方法に気をつけて早めに使いきろう。

ということです。

「天然由来の成分」ならば安心というイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、天然由来の成分がすべて肌にとって安全というわけではありません。ですから、肌荒れイコール乳化剤のせいと決めつけず、化粧品で肌が荒れたらまずは病院を受診してください。