工場監査の目的は?種類・重要性や流れなどと共に解説

新しい取引先との取り引きを始めるに際、工場監査を行えば双方の信頼感と理解度が深まり、よりスムーズな取り引きが可能になります。

しかし、その一方で「工場監査でどこまでチェックすればいいのか」「問題点が見つかった場合、どうやって対応してもらえば良いのか」といった不安を覚えている方もいるでしょう。

今回は、工場監査をどうして行うのか、目的や監査のポイント、改善点が見つかった場合の対処方法を紹介します。

  1. 工場監査の目的とは?
  2. 工場監査の種類
  3. 工場監査のチェックポイント
  4. 工場監査後の改善の流れ

1.工場監査の目的とは?

はじめになぜ工場監査を行うのか、主な目的と工場監査の重要性を紹介します。工場監査の目的は一つではありません。工場監査を行う際は、まず「なぜ、工場監査が必要なのか」と考えてみましょう。そうすれば、チェックポイントも自然と見えてくるはずです。

1-1.経営状態の確認

実際に工場まで足を運ぶことで、工場の経営状態が分かります。書類の上では優良企業であっても、現場は自転車操業の火の車だったといったケースは決して珍しくありません。反対に、高い利益を上げていなくても堅実な運営でレベルの高い製品を作っている工場もあります。円滑な取り引きをするためにも、経営状態の確認は重要です。

1-2.製造工程が製品の製造に適しているか

工場の設備や生産体制が依頼した製品の製造に適しているか確認することも、工場監査の重要な目的です。書類上では問題ないように見えたが、実際に工場監査を行ったら製造は難しいと分かった、といったケースもあるでしょう。また、製造はできるが現在の工程では依頼したレベルに達するまで改善が必要な場合もあります。逆に、書類上では不安要素が多かったが、実際に工場監査を行ったら、問題が見当たらず安心して依頼できると分かったといった事例もあるでしょう。

1-3.業務の改善や再発防止が行われているか

工場はいくら予防策を立てていても、労災が起きる可能性があります。また、製造過程で異物の混入など、不良品が発生する可能性もあるでしょう。労災や不良品が発生した後、どのように業務改善や再発防止が行われたかを確認するのも、工場監査の重要な目的です。実際に自分の目で確認することで、安心して再び製造を依頼できます。

1-4.実際に自分の目で見ないと分からないことはたくさんある

工場監査は、実際に製造を依頼する方が工場を自分の目で製造工程などを確認する作業です。詳細な説明を受けたり、綿密な計画書を作成してもらったりしても、実際に自分の目で確認しなければ分からないことはたくさんあるでしょう。また、依頼者の意見を聞くことは、工場側にとっても有益です。

2.工場監査の種類

ここでは、工場監査の種類について紹介します。一口に工場監査といっても監査する方の立場や目的で種類が異なるので、種類を覚えておくのがおすすめです。

2-1.内部監査

内部監査とは、社内の人間が行う監査です。「ISO」が定めるマネジメントシステムの取得の中にも、「第一監査」があります。これは、内部機能監査の確立のことなので、ISOを取得している工場ならば内部監査が可能です。内部監査は、自社が定める規則やルールがきちんと工場で守られているか、ハラスメントなどが行われていないか、確認するために行われます。内部監査が正しく行われていれば、自社の仕事を客観的かつ正確に監査できる有能な人材が育っている証明にもなるでしょう。

2-2.外部監査

外部監査とは、会社外の監査員が工場内を監査する方法です。取引先が行う第二監査と、ISOの監査員など利害関係のない全くの外部者が行う第三監査があります。外部監査を実施することで、第三者からの信頼を得られるのもメリットです。

2-3.総合的な監査と特定領域監査の違い

監査は、工場全体の工程や生産体制を確認する場合と、特定の領域を監査する場合があります。たとえば、新しく取引先が増える場合、第二監査による総合的な監査を行ってもらい、工場の生産体制などをチェックしてもらう場合が多いでしょう。一方、ある場所で問題が発覚した場合、その部署だけ内部、もしくは外部の人間による徹底した監査が行われる場合があります。それが、特定領域監査です。監査の目的によって使い分けられるのが一般的となっています。

3.工場監査のチェックポイント

ここでは、工場監査の際に特にチェックするポイントを紹介します。初めて工場監査を行う方などは、参考にしてください。

3-1.品質管理に関するチェックポイント

品質管理に関するチェックポイントには、以下のようなものがあります。

  • 原材料は適した環境で保管されていたか
  • 原材料の品質はマニュアルどおりか
  • マニュアルに沿った正しい作り方はされているか
  • 時短などのために裏マニュアルなどは作られていないか
  • 工場内は5Sが徹底されているか
  • 完成した製品は適切な環境で保管されているか

また、工場で働く方の服装や、製造機器の状態や手入れの具合などもチェックするケースもあるでしょう。

3-2.法令順守に関するチェックポイント

工場は、周辺環境を守るためや従業員の健康を守るために、遵守すべき法律が制定されています。これらの法律が守られているかチェックしましょう。以下のような工程をチェックすることで、法令順守されているか監査が可能です。

  • 従業員の服装・装備
  • 工場内の作業環境
  • 工程
  • 廃棄物の処理法

これらのチェックポイントは、環境への配慮にも通じます。

3-3.環境への配慮

現在は、環境汚染を避けるために工場にはさまざまな制限やルールが設けられています。環境に配慮せずに製品を製造していると分かれば、いくら品質が良くてもイメージダウンは避けられません。環境への配慮でのチェックポイントは、排水・廃棄・騒音・臭いなどです。近隣に海や川がある場合は、そこの状態もチェックしてみましょう。公害防止管理者がいる場合は、説明を受けながら監査をする方法もあります。

4.工場監査後の改善の流れ

工場監査後、改善点が見つかるケースもあります。ここでは、工場監査後に問題点が見つかった場合の改善の流れを紹介しましょう。

4-1.改善点の指摘

改善点が見つかった場合、工場長や、改善点が発見された部署の責任者などに改善点が見つかったことを告げます。まずは、責任者に改善点があることを指摘し、改善の必要性などを理解してもらいましょう。また、なぜ改善点が必要な事態が発生したか、聞き取り調査なども行う場合があります。

4-2.改善するための方法をピックアップする

改善点が見つかり、工場長や部署の担当者に周知した後は、従業員と責任者の両方に改善するための方法を考えてもらいます。経営者や第三者が「このように改善してください」と命令することもできますが、実行できなければ意味がありません。仕事をしながら、誰もが守れてより働きやすくなる方法を見つけることが大切です。

4-3.改善方法を正式に定めて実行する

ピックアップされた改善方法の中で最良なものを、正式な改善方法と定めて実行します。その後、改善方法がうまく運用されているか、指摘された改善点が実際に改善されているか、再度工場監査を行ってもいいでしょう。ここまで、数か月で実行できる場合もあれば、1年近くかかるケースもあります。改善は早急に行うに越したことはありませんが、焦りは禁物です。

まとめ

工場監査は、工場の信用を高め、従業員が安全、かつ安心して働けるために必要なものです。工場監査を実施しなかったり、実施してもいい加減だったりすると、工場が製造した不良品で重大な事故が発生したり、深刻な労災が起こったりする恐れもあります。工場監査は、面倒な一面も確かにありますが、必要なこと、と理解しましょう。また、内部監査を行う場合は、内部監査が正確かつ公平に行える人材を育てることも重要です。