工場の環境対策とは? 必要性や行うべきこと・実例を解説

日本の工場は高度経済成長期に有害汚染物質を排出するなどして深刻な環境汚染や公害問題を引き起こしてきました。そのイメージは未だ根強く、工場といえば環境を汚すものと考えている方も多いことでしょう。

しかし、現在の日本では法律が整備され、環境対策をしっかり行った工場しか建設することができません。しかし、いまだに工場は環境破壊の原因というイメージから、風当たりが強くなることもあるでしょう。

そこで、今回は工場がスムーズに運営していくために必要な環境対策を紹介します。

  1. 工場が現在も抱える環境への問題点
  2. 工場が行うべき環境対策は?
  3. 工場の環境対策について取り組み事例を紹介
  4. 工場の環境対策に関するよくある質問

この記事を読めば、工場の環境対策のポイントがよく分かります。工場で環境対策に関する仕事に就いている方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてください。

1.工場が現在も抱える環境への問題点

はじめに、工場が現在も抱える環境への問題点を紹介します。四大公害を出した反省から、日本では環境に関する法律が整備され、工場に求められる基準も厳しくなりました。それでも、残る問題点とはなんでしょうか?

1-1.二酸化炭素の排出

工場の稼働には莫大(ばくだい)なエネルギーが必要です。エネルギーを使えば、二酸化炭素の排出量が増えます。世界的にカーボンニュートラル化が推奨される中、普通に工場を稼働しているだけでも、二酸化炭素の排出基準を超えてしまうこともあるでしょう。

1-2.水の問題

工場によっては、大量の水を使います。工場では地下水を使用することが多いのですが、水を使いすぎると地盤沈下などのさまざまな問題が起こるでしょう。また、汚れた水の処理方法も問題が起こりがちです。入念に濾過しても有害物質を完全に取り切れないこともあります。

1-3.騒音や臭いの問題

工場によっては、対策をしても騒音や臭いが発生することがあります。工場の規模によっては、完璧な対策が難しいこともあるでしょう。また、工場が作られた当時は周囲に何もなく問題が起こらなかったけれど、周囲が宅地になって騒音問題や臭いの問題が発生したケースもあります。

2.工場が行うべき環境対策は?

では、工場が行うべき環境対策はどのようなものがあるのでしょうか? ここでは、その一例を紹介します。

2-1.再生可能エネルギーなど最新の環境対策の導入を検討する

現在は、技術の進歩により工場が導入できる環境対策が増え続けています。その代表例が、太陽光発電などの再生可能エネルギーです。たとえば、工場の敷地内に太陽光発電パネルを設置すれば、工場で消費する電力の一部をクリーンなエネルギーで賄うことができるでしょう。

2-2.工場の操業方法を工夫する

工場の操業方法を工夫することで、二酸化炭素の削減や使用する水の量を減らすことが可能です。たとえば、10必要だった工程を最新の機械を導入することで8に減らせば、その分稼働時間が短くなって使用するエネルギーや水の量を減らせます。稼働効率を上げれば、売り上げアップにつながる可能性もあるでしょう。

2-3.周辺住民の理解を求める

工場は、どうしてもマイナスイメージがつきやすいものです。特に、周囲の人々に工場に対する理解を得られないと、工場への風当たりは強くなるでしょう。周辺住民に「環境保護のためにこのような取り組みをしています」といった情報をオープンにし、理解を深めてもらうことも、立派な環境対策の一環です。

3.工場の環境対策について取り組み事例を紹介

では、実際に工場はどのような環境対策に取り組んでいるのでしょうか? ここでは、その一例を紹介します。

3-1.日本製紙クレシアの取り組み

日本製紙クレシアは、東京をはじめとして全国に4つの工場を持っています。すべての工場で燃料を都市ガスにしてクリーンエネルギーの利用を実現するのと同時に、CO2排出量の削減を実施中です。また、製造工程で使用した水の浄化・再利用を促進しています。

3-2.サントリーグループの取り組み

ビールや清涼飲料を製造しているサントリーグループでは、稼働状況を一元的に記録・管理し、生産工程での省エネ活動に取り組んでいます。また、豪雪地域に立地する工場では、冬季の積雪を蓄える「雪室(ゆきむろ)」を作り、雪氷熱を貯蔵庫の冷房に活用中です。

3-3.日立グループの取り組み

日立建機のグループ会社「多田機工」では、事務棟・工場棟は全照明のLED化を実現し、家屋に自然光を取り入れるトップライト構造や熱効率の高い断熱材、断熱ガラスを採用しています。また、日立電梯(中国)有限公司およびグループ会社では、作業工程の見直しでVOCの削減を実現しました。

4.工場の環境対策に関するよくある質問

ここでは、工場の環境対策に関するよくある質問を紹介します。

Q.工場の環境対策は、どのくらい義務化されているでしょうか?
A.環境省のホームページに掲載されている、「工場及び(法律なので、文字を変えません)事業場から排出される大気汚染物質に対する規制方式とその概要」などで、一定の基準は定められており、工場を運営する場合は規制に従わなければなりません。法律も確認しておきましょう。

Q.資金の問題で環境対策が十分にできません。
A.可能なことから実施していきましょう。また、自治体によっては環境対策を行うと補助金が出たり免税を受けられたりします。

Q.工場の環境対策はずっと続けていくべきでしょうか?
A.はい。常に新しい技術が生まれているので、最新の情報を入手し続けるだけでも違います。

Q.工場の環境対策に関する資格はあるでしょうか?
A.エネルギー管理士などがあります。

Q.工場の環境対策に関して、自治体独自のルールなどはあるでしょうか?
A.独自の条例を設けている自治体もあるので、定期的に確認をしてください。

まとめ

今回は、工場の環境対策について解説しました。環境対策は、継続して行うことが大切です。また、より効率的に環境対策が行なえるシステムなども開発されているので、積極的に利用してみましょう。