塗料の製造に分散機を使うメリットは? 分散機を選ぶポイントもチェック!
塗料の製造に分散機を使うべきか、使ったらどのようなメリットがあるのか……など、分散機について気になっている方は多いでしょう。そもそも、分散機とは気体・液体を粒子状に散らばる状態を作る装置のことです。液状やペースト状の材料を分散したり、解砕(かいさい)したりすることに役立ちます。具体的に、塗料の製造に使うとどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
本記事では、塗料の製造に分散機を使うメリットや分散機を選ぶポイントなどを解説します。
- 塗料の製造に分散機を使うメリットは?
- 塗料の製造に用いられる分散機の種類
- 分散機を選ぶポイントは?
- 塗料と分散機に関してよくある質問
この記事を読むことで、塗料の製造に用いられる分散機の種類も分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。
1.塗料の製造に分散機を使うメリットは?
最初に、塗料の製造に分散機を使うメリットをチェックしておきましょう。
1-1.物質の粒子がバラバラにできる
そもそも、分散機とはどのような機械なのか、知らない方は多いのではないでしょうか。簡単に説明すると、気体や液体の中に、別の物質が粒子状に散らばって存在する分散状態を作る機械のことです。分散工程には分散機が使われることが多く、顔料表面のぬれ促進や凝集体を解砕し微細化を行うことができます。顔料の分散工程は、塗料やインキの製造においては重要な意味を持つものです。
1-2.顔料が持つ特性が発揮できる
顔料が持っている特性が発揮できるのは、分散機の大きなメリットといえるでしょう。一般的に、乾燥して凝集した状態の顔料が用いられますが、これを溶媒中に分散させなければなりません。凝集している顔料を1次粒子近くまで解砕し、その状態を維持することが顔料の特性発揮につながるのです。また、顔料の粒子径は透明性・光沢・着色力などに影響します。中でも、透明性と光沢は顔料の微細化によって向上するのです。
1-3.発色や定着がよくなる
塗料の製造に分散機を使うことで、発色や定着がよくなるというメリットがあります。そもそも、顔料とは紙・布の表面に定着することで発色するインクのことです。顔料は複数の粒子から成り立っているもので、これを均等かつバラバラにすることで発色や定着がよくなります。発色や定着をアップさせることが、塗料の製造で分散機を使う大きな目的といえるでしょう。顔料を分散させることで塗料の美しさを最大限に引き出し、品質アップにつながります。
1-4.美しい色を安定的に作り出す
顔料は塗料だけでなく化粧品などにも使われている素材です。化粧品の製造で分散機はとても重要な意味を持っており、きれいな美しい色を安定的に作り出す機械として重要視されています。つまり、きれいな色を生み出すためには、顔料を高度に分散させる技術が必要だということです。前述したように、顔料分散は微細化(解砕)が重要ですが、安定化も必要不可欠な要素となります。微細化・安定化に加え、ぬれ(乾燥した粒子凝集体が液体にぬれて粒子間の凝集力が低下すること)の3つがポイントです。
2.塗料の製造に用いられる分散機の種類
ここでは、塗料の製造に用いられる分散機の種類をチェックしておきましょう。
2-1.気中分散機
主な分散機の種類としては、気中分散機と液中分散機の2種類があります。気中分散機は、空気中で粒子を分散させる機器のことです。小型のものが多く、省スペースでも設置することができます。また、気中分散機の中にも以下のような種類があるので、ぜひチェックしてください。
- 攪拌(こうはん)槽:速度変動や攪拌翼への衝突によって凝集体を解析する
- 回転翼型分散機:外力の複合作用によって凝集体を解析する
- 流動層型分散機・回転ドラム式:機械的解砕によって凝集体を解析する
- 障害物衝突型:凝集粒子を衝突させる
- エジェクター型・ベンチュリー型・オリフィス・細管:気流の加速およびせん断流れによって凝集体を解析する
2-2.液中分散機
液中分散型は、気中分散型とは違って大型なものがほとんどです。液中の中で粒子を分散させる機器となっており、一度にたくさんの顔料を均等に分散することができます。液中分散機の主な種類が以下のとおりです。
- 容器駆動型ミル(回転ミル・振動ミル・遊星ミル):回転容器内などに挿入された媒体の衝突・摩擦によって凝集体を解析する
- 媒体攪拌ミル(アトライター・ビーズミル):媒体であるボールやビーズを使用。媒体の衝撃力とせん断力によって凝集体を解析する
- 高速回転せん断型攪拌機:高速の回転翼と外筒との狭い間隙(かんげき)へ凝集粒子を通すことで凝集体を解析する
- 高圧噴射式分散機:処理液を高圧噴射し、固定版もしくは処理液同士に衝突する
- 超音波分散機:超音波振動やキャビテーションなど
- コロイドミル:狭い間隙での高せん断流れによって凝集体を解析する
- ロールミル:ロール間の間隙を利用したせん断力と圧縮力によって凝集体を解析する
2-3.構造と材質にも違いがある
分散機は構造と材質にも違いがあります。たとえば、ロールミルの場合、構造は水平型・傾斜型の2種類です。ロール材質はスチールタイプとセラミックタイプがあります。一方、ビーズミルの場合は堅型と横型があり、ロールミルと同じくセラミックタイプや超音波装置付きなどです。分散機の構造と材質によって、塗料にもさまざまな変化が現れるので、分散機を選ぶ際は入念にチェックしておかなければなりません。後ほど、【3.分散機を選ぶポイントは?】で詳しく説明しますが、機器の販売を行っている業者スタッフから詳しく説明を受けることが大切です。
2-4.分散装置のメーカーもチェック!
分散装置を販売しているメーカーもさまざまです。分散機のメーカーといえば、アシザワ・ファインテックでしょう。ビーズミルのメーカーとして微粉砕機・分散機でナノサイズへの微細化を実現しています。微粒子技術に関する機械を扱っている代表的なメーカーです。また、EKO(英弘精機株式会社)もさまざまなタイプの分散機やホモジナイザー・攪拌機を取り扱っています。そして、三丸機械工業は高圧式ホモジナイザーの専門メーカーです。高圧式ホモジナイザーを専門に扱っているからこそ、ライン機やラボ機も取り扱っており、さまざまな分野でご活用いただけます。
3.分散機を選ぶポイントは?
ここでは、分散機を選ぶポイントを解説します。
3-1.何のために使うのか「目的」を明確にする
分散機を選ぶポイントとしては、何のために使うのか「目的」をハッキリさせることが1番大切です。分散機は塗料の製造過程だけでなく、化粧品・医薬品・コーティング剤の乳化などさまざまな分野で活用されています。用途によって、適した分散機が異なるため、どのような目的で分散機を使いたいのか目的を最初に考えましょう。素人では専門機器について理解できない部分がありますが、何のために使うのかと言う目的はあらかじめ決めておくことができます。専門業者と話し合いながら、用途に合った分散機を選びましょう。
3-2.一度に分散したい量に応じて選ぶ
顔料の用途はもちろんのこと、一度に分散したい量も考慮して選ぶ必要があります。分散機の種類やサイズによって、一度で分散できる顔料の量は決まっているので注意しておかなければなりません。研究室で少量の顔料を分散したいなら気中分散機や超音波分散機を用いるといいでしょう。逆に、工場で大量の製品を作りたいなら、高圧噴射式分散機やホモジナイザーを選ぶのがベストです。どのようなシーンでどのくらいの顔料の量や質を分散したいのか、よくよく考えながら分散機を選びましょう。
3-3.サイズと値段も要チェック!
分散機を選ぶ際は、機器のサイズと値段もチェックしておきたいポイントです。分散機は誰もが気軽に購入できる値段ではないため、そう簡単に手に出せるものではありません。あくまで目安となりますが、分散機は数百万円単位になるでしょう。ラボで使うような小型であれば数十万円で抑えられますが、100万円以上は考えたほうがよさそうです。失敗できないお買い物だからこそ、しっかりと性能を確認した上で選ぶことが大切なポイントとなります。用途・目的・サイズ・値段など、どこに重点を置くのか、優先順位も決めておくとスムーズです。
3-4.レンタルをして確かめる方法も
どの分散機を選べばいいのか、なかなか決めることができない場合は、レンタルをして性能を確かめることをおすすめします。前述したように、分散機は高額な機械ですので、お試しとしてレンタルを行っているメーカーは存在しているでしょう。「いきなり購入するのはちょっと……」「まずは試してみたい」と思っている方は、お試しレンタルを利用してください。なお、三丸機械工業ではテスト機の貸し出しを行っているので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
3-5.業者選びも大切なポイント
分散機やホモジナイザーなどを販売している業者選びも重要なポイントとなります。どの業者を選ぶかによって、用途に合った分散機が購入できるでしょう。中には、目安よりも高額な値段で売りつけたり、適当に話を聞いて売ったりしている悪質な業者が存在しているので注意してください。どの業者を選べばいいのか分からない方は、以下のポイントを参考にしましょう。
- スタッフの対応が丁寧でスピーディーか
- 分散機やホモジナイザーなどの機器に詳しいか
- どのような質問でも分かりやすく説明してくれるか
- 技術相談にのってくれるか
- テスト機の貸し出しを行っているか
- 見積書の内容が具体的に記載されているか
- 口コミや評判がいいか
4.塗料と分散機に関してよくある質問
塗料と分散機に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.顔料分散とはどんな技術か?
A.顔料・フィラーを微粒化し、溶媒や樹脂溶液に懸濁(けんだく)させ、その状態を安定化させる技術のことを顔料分散といいます。その状態には、結晶体→複数の結晶体が強く結合したアグリゲート、結晶体やアグリゲートが比較的緩やかに結合したアグロメレートなどの種類があり、それぞれ違いがあるのです。結晶体とアグリゲートは化学的や機械的な方法でこれ以上小さくなりません。そのため1次粒子(1次凝集体)と呼ばれ、この1次粒子が凝集している粒子は2次粒子と呼ばれています。
Q.分散機の導入方法は?
A.基本的に、メーカーへ問い合わせをして、使用用途に合った分散機を選び、メーカーが選んだ機器を運んでくれるまでが主な導入方法となります。新品はもちろんのこと、中古品を選ぶのも選択肢の1つです。新品のメリットは何よりも新しい分散機が使用できることですが、費用はかかります。一方、使用済みの中古品は新品よりも安く購入できるのが大きなメリットでしょう。ただし、販売年月から経過している種類ほど状態が悪い可能性があります。
Q.分散機を使う際の注意点は?
A.分散機を長く使い続けるためには、使用後の掃除が必要となります。分散機やホモジナイザーといった機械はメンテナンスがとても大切な要素です。きちんと掃除をして清潔な状態を維持してください。また、定期的にメーカーによるメンテナンスも受けておきましょう。しっかりとメンテナンスや掃除を行うことで故障のリスクを抑えることができます。
Q.分散機を選ぶ際に注意しておきたいことは?
A.粘度に注意してください。製品によっては、高粘度のサンプルに向かないものもあります。高粘度のサンプルである場合には、高粘度対応精密分散機といった粘度に合った分散機を選ばなければなりません。粘度に関しては、事前にメーカーへ確認しておかなければ分からないケースがほとんどです。購入後で合わなかったということがならないように、事前にチェックしておきましょう。
Q.技術相談とは?
A.どのように扱えばいいのか、こういうケースはどのように対応すべきかなど、専門的な分野から相談にのってくれるサービスのことです。分散機の扱いは簡単ではないため、きちんと業者から説明を受けなければなりません。業者選びの際は、なるべく技術相談を受け付けているところを選ぶのが大切です。
まとめ
塗料の製造に分散機を使うことで、顔料の効果を発揮でき、美しく定着のいい塗料を作り上げることができます。ただ、分散機にもさまざまな種類があるので、どのような目的で使うのか、一度にどのくらいの顔料を分散したいのかなど、分散機を選ぶポイントをチェックしておかなければなりません。業者の中には、技術相談にのってくれるところもあるので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。