工場の台風対策でできることは? 台風に備えて準備しておくこと
日本は台風・地震などの自然災害大国と言われています。特に、台風は毎年必ず日本列島にやってくる災害ですので、できるときに台風対策を施しておかなければなりません。しかし、一般家屋よりも規模が大きい工場の場合、どのように台風対策を行えばいいのか分からない方が多いでしょう。
本記事では、工場の台風対策やポイントなどについて解説します。
- 台風による工場の被害は?
- 工場の台風被害を未然に防ぐ対策は?
- 工場が台風に備えて準備しておくこと
- 台風が接近しているときの対応は?
- 工場の台風対策に関してよくある質問
この記事を読むことで、工場における台風対策のコツや準備すべきことなどが分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。
1.台風による工場の被害は?
まずは、台風で工場にどのような被害が起きるのかチェックしておきましょう。
1-1.よくあるのは大雨による雨漏り
台風による工場の被害でよくあるのは、大雨による雨漏りです。台風がもたらす大雨で、さまざまな被害がさまざまな場所で起きています。今年(2019年)、日本にやってきた台風19号でも堤防が決壊し一般家屋や工場が水没しました。工場や倉庫を経営している事業者にとっては、台風で水没を免れたとしても、大雨による雨漏りに頭を悩ませている方が多くいるのではないでしょうか。また、雨漏りによって大切な商品や製品がダメになってしまい、工場だけでなく企業の運営が難しくなってしまう可能性もあるのです。
1-2.強い風で吹き飛ばされる屋根
近年の台風は巨大化しつつあり、風も強くなっています。工場における台風の被害は、屋根などが吹き飛ぶのもよくあるトラブルの1つです。実際に、2018年9月に上陸した台風21号では、猛烈な風でたくさんの工場や倉庫の屋根が吹き飛ばされてしまいました。屋根が吹き飛ばされてしまうと、製造ラインが風雨にさらされてストップしてしまい、事業の運営に支障をきたしてしまいます。大事な製品を製造・保管する工場や倉庫を守るためには、屋根が吹き飛ばされることがないように注意しなければなりません。
1-3.棟板金や板金を止めている釘(くぎ)がゆるむ
台風による工場や倉庫の屋根トラブルの中には、屋根が吹き飛ぶだけでなく棟板金や板金を止めている釘がゆるんでしまうトラブルもあります。特に、金属屋根の場合、屋根の頂上部分に棟板金を施工し屋根材を押さえているのです。棟板金は経年劣化によって少しずつ釘がゆるんでしまいますが、釘がゆるむと屋根にすき間ができてしまいます。その結果、すき間から水が浸入し雨漏りだけでなく躯体(くたい)の腐食がすすんでしまうのです。屋根材だけでなく、倉庫・工場全体がもろくなってしまいます。
2.工場の台風被害を未然に防ぐ対策は?
では、工場の台風被害を防ぐためにどのような対策を施せばいいのでしょうか。
2-1.台風による災害を予知することが大事
工場の台風被害を防ぐためにさまざまな対策がありますが、1番大切なのは台風による災害を予知することです。気象庁のホームページを参考に、台風の大きさ・速さ・進路・いつ暴風域に入るのかなど台風関連の情報を確認してください。そして、あらかじめハザードマップを入手することも大切です。ハザードマップには避難所の場所や、工場周辺の特徴・浸水しやすい場所などが記載されています。工場の場所がどのような災害を受けやすいのか知ることで、より効果的な対策ができるのです。
2-2.屋根の塗装・カバー・葺(ふ)き替え工事
雨漏りや屋根の吹き飛ばしを未然に防ぐためには、屋根の塗装工事・カバー工事・葺き替え工事などが必要になります。特に、金属屋根の場合は、屋根塗装が必要不可欠です。定期的に塗装を行うことで、より頑丈な屋根に仕上がるでしょう。一般的な塗り替えは7~10年程度ですが、種類によって異なるので注意してください。また、既存屋根材を撤去せずその上に新しい屋根材を施工するカバー工事や、既存屋根材をすべて撤去し新たに屋根を施工する葺き替え工事もあります。屋根の状態によって適切な工事方法を選ぶのがポイントです。
2-3.浸水を防ぐための対策も
工場には店舗での在庫品や出荷商品などを保管していることが多いため、浸水被害から守るための対策が必要です。浸水を防ぐために、土のうを用意したり、シャッターで防いだりするなどの対策を施しましょう。また、被害をシミュレーションすることも大切なポイントです。どこから水が浸入しやすくなるのか考えることで、浸水の恐れがある場所を避けて商品を移動したり保管したりすることができるでしょう。
3.工場が台風に備えて準備しておくこと
ここでは、工場が台風に備えて準備しておくことを紹介します。
3-1.台風に伴う休業や時差出勤に関するルールを明確にする
工場の規模が大きくなるほど働く従業員もたくさんいるため、台風に伴う休業や時差出勤に関するルールを明確にすることが大切です。近年、TwitterなどのSNSで、台風などの災害時でも出勤を強制したり、出社判断を従業員に任せたりする会社が問題に上がっています。法的な定めはありませんが、台風に伴う休業や時差出勤などのルールはハッキリと人事担当が明確にしておかなければなりません。従業員に判断を任せるのではなく、安全第一でルールを考え周知しておく必要があります。休業・時差出勤・早退・在宅勤務などの指示をどのように下すのか、行動基準と就業規則を明確にしておきましょう。
3-2.シャッターや窓などの補強装置
実際に、台風に備えてシャッターの強度を1.4倍にしたり、窓を強化したりする企業が増えてきました。台風や地震など自然災害で大打撃を受ける工場が増加したこともあり、事前に補強装置を導入するなどの対策が注目されています。補強装置の中には、アルミ合金製の棒状器具をシャッターの内側と外側に備えつけることで強風によるシャッターの崩壊を防ぐことができるものもあるのです。導入費用はかかりますが、工場を守るためには必要な対策と言えるでしょう。
3-3.大切な商品を安全な場所に移動させる
工場の中にある大切な商品を、河川から離れた地区の倉庫に移動させるなど避難対策を講じておくことも有効な方法です。移動できる商品はできるだけ安全な場所に移動させておきましょう。また、敷地内に飛ばされやすいものは置かないようにしてください。工場が立地する地域や地形の特性を踏まえ、暴風ネットの設置など必要な処置を行うことも大切です。どこに対策を施せばいいのか、日常の保守・点検と併せて建物の傷み具合などもチェックしておきましょう。
4.台風が接近しているときの対応は?
では、台風が接近しているときはどのような対応を取ればいいのでしょうか。
4-1.台風発生時の組織体制・緊急連絡網を確認する
台風が接近しているときは、気象庁のホームページをこまめにチェックし洪水・大雨警報などが発令されていないか気象情報を確認してください。そして、台風接近時の組織体制をもう1度確認することが大切です。台風接近時の出勤・退勤時間を従業員に知らせたり、緊急連絡が必要になった場合の連絡網などを全員に伝えたりする必要があります。万が一のときに備えて、ハザードマップを確認し避難所の場所もチェックしておきましょう。台風対策の一連の流れを工場の環境に合わせてマニュアルを作成し、全員に認知させることが大切です。
4-2.初動対応マニュアルを整備する
台風が接近しているときに役立つのが、初動対応マニュアルです。強風による飛来物の直撃を受けたり、ガラスなどが割れてケガをしたりする場合、応急手当が必要になります。何かの理由でケガした際に備えて、応急手当に必要な道具を準備しておきましょう。また、高潮による浸水や大雨による洪水の被害を受ける恐れがあれば、避難の準備も必要です。最寄りの避難場所はもちろんのこと、避難経路や非常持ち出し袋などを事前配布し素早く避難ができるようにしておきましょう。
4-3.就業時間外の伝達をするための準備も大切
台風の接近に伴い、休業・時差出勤・在宅勤務などを工場従業員に伝達する場面もあると思います。台風の接近・上陸が休日明けになる場合などは、事前伝達が就業時間外になることも想定しておかなければなりません。非常時における意思決定を誰がするのか、災害の情報を集める担当者を決めてください。そして、情報を集約する方法と場所・意思決定を行う担当者と判断基準も明確にしておく必要があります。決定された情報を伝達するために、連絡手段を整えておくことも大切です。
4-4.心配だからと工場の様子を見に行くのはNG
台風接近時によくあるのが、心配だからと工場の様子を見に行き、そのまま被害に遭ってしまうケースです。実際に、ニュースでも「川の様子を見に行って行方不明になった」という事例を見かけます。どんなに商品や製品の状態が心配だとしても、安全が確保できない限り現場に行くのはNGです。たとえ、台風が過ぎ去ったとしても川の氾濫・土砂崩れなどの二次災害に遭う恐れがあります。
5.工場の台風対策に関してよくある質問
工場の台風対策に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.海岸付近にある工場の台風対策で必要なことは?
A.海岸付近は潮風などでサビやすくなるため、留め具等の緊結強度が弱まりがちです。強風時に破損が生じる恐れがあるので、日常から防サビ対策を行ってください。特に、金属屋根はサビやすい傾向があるため、防サビ効果が期待できる塗料や屋根材にするといいでしょう。通常の塗料や屋根材よりも費用はかかりますが、万が一のときのために十分すぎるほどの対策を施したほうが安全です。
Q.停電対策でやるべきことは?
A.台風によって電柱が折れたり、停電したりすることがあります。停電は工場の製造ラインをストップさせてしまう恐れがあるため、万が一の停電に備えて予備電源を用意してください。停電すると予備電源が自動的に起動して発電してくれるため、従業員や製造ラインの安全が確保できるでしょう。
Q.工場内の機器で気をつけたいことは?
A.商品を製造する機械やPC機器などの電気系統の設備機器が水没することです。水没すると故障だけでなく、漏電から感電や火災につながる恐れがあります。とても危険な状態になるため、安全な場所に設置したり移動させたりするようにしましょう。近年、日本にやってくる台風が増えているので、安全な場所へ移動させやすい設置方法を検討することが大切です。
Q.備えておきたい防災グッズ・備蓄品は?
A.電気・ガス・水道等のインフラや鉄道等の交通機関が寸断される恐れがあるため、帰宅困難となった従業員が生き抜くことができる量の備蓄品や防災グッズを用意しておく必要があります。ヘルメットや保護服はもちろんのこと、災害用のトイレセットや乾パン・レトルト食品・飲料水など従業員1人あたり1~2週間分を用意しておくのが理想です。
Q.水害の後の処置で気をつけたいことは?
A.土砂や泥水が浸入した水害の後は清掃と雑菌を入念に行う必要があります。特に、下水があふれた場所はさまざまな病気に感染する危険が高まるのです。薄めたクレゾール液をじょうろで地面がぬれる程度に散布してから石灰を散布し殺菌してください。汚水に浸った壁や床・設備などは念入りに掃除をした後、薄めたオスバン液に浸した布などで入念に拭き取ります。悪臭が立ち込める場合もあるので、消臭処置もしっかりと行わなければなりません。
まとめ
近年、台風の勢力が強まっている中、工場の台風対策が重要視されています。きちんと対策を行っておかなければ、強風で工場の屋根が吹き飛んだり、大切な商品が売りものにならなくなったりと被害が大きくなる恐れがあるのです。被害を抑えるためにも、しっかりと屋根や外壁のメンテナンスを行い、傷みや劣化が目立つ箇所の修繕工事を早めにするなどの対策が必要となります。また、台風接近時に誰が工場従業員に伝達を行うのか、どのように情報を収集するのか緊急時の対応もマニュアル化することが大切です。台風がやってきたときに実行するのではなく、できるときにきちんと話し合いマニュアルを作成しておきましょう。