超音波分散とそれを行う超音波分散機とはどんなもの?
AとBを混ぜ合わせてCという物質を作る。これは、加工で頻繁(ひんぱん)に行われる行為です。しかし、ただかき混ぜるだけでは物質は均一に混じりません。そこで活躍するのが、「超音波分散機」です。
今回は、超音波分散と超音波分散機についてご紹介しましょう。この機械を使えばより高品質の商品を作れます。また、超音波分散を利用した商品もご紹介しましょう。超音波分散機の導入を考えているという方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
- 超音波分散とは?
- 超音波分散のメリットは?
- 超音波分散が活用されている製品は?
- 超音波分散機とは?
- 超音波分散機を導入したい場合は?
1.超音波分散とは?
ふたつの物質を混ぜ合わせて別の物質を作ることは、加工の基本です。ご家庭や学校でも行っている方は多いでしょう。しかし、物質にはスムーズに混じりあう物質もあればなかなか混じりあわないものもあります。
一例をあげると水と油。このふたつは一緒に入れても水の表面に油が浮くばかりで混じりあいません。しかし、水性のものと油性のものを混じりあわせて作る物質は、たくさんあります。そこで、人は昔から水性のものと油性のものを混ぜ合わせようと努力してきたのです。
その結果、開発されたのが界面活性剤。これは、親油性と親水性の両方の性質を持つため、水性のものと油性のものを結びつける働きがあります。これを使えば、水性のものと油性のものを混ぜ合わせることができるのです。しかし、まだ問題はあります。
物質はそれぞれ分子の大きさが違うのです。大きさの違う分子を持つもの同士を混ぜ合わせても、均一に混じりません。そこで、超音波を使って分子を細かく砕くことで、均一に混ぜあわせるのです。
超音波とは、人間には聞き取れないほどの高い音のこと。空気や液体を非常に細かく振動させるので、物質を細かく砕くこともできます。これが超音波分散の仕組です。
2.超音波分散のメリットは?
では、超音波分散のメリットとはどのようなものがあるのでしょうか? この項では、その一例をご紹介していきます。
2-1.物質の均質化
分子が違うものを混ぜ合わせると、どうしてもむらができます。肉眼では確認できないほどのむらでも、品質が変わることもあるでしょう。超音波分散を行い、物質を均一化すると大量に作っても品質が安定します。つまり、大量に高品質の製品ができるわけです。
2-2.物質の安定
品質にむらがあると、その部分から分離しやすくなります。もともと混じりあえる物質でも、界面活性剤を使っていても分子同士の混じり具合が悪いと、バラバラになりやすいのですね。超音波分散を行い、物質の分子が製品の中で均一に散らばるようにしておけば、物質は混じりあった状態で安定します。つまり、長期間の保存も可能になるのです。
2-3.品質の向上
物質同士が均質に混じりあうことによって、製品の品質が向上します。昔からある製品でも最新のものは高品質になっている、というものも多いでしょう。それは、超音波分散の成果かもしれません。
3.超音波分散が活用されている製品は?
この項では、超音波分散が活用されている製品の一部をご紹介しましょう。私たちの身近にあるものも多いのです。
3-1.接着剤
いろいろな物体を強固に接着するには、いくつもの物質を混ぜ合わせる必要があります。接着剤というと、木材やプラスチック、陶器などをくっつけるものというイメージがありますが、建築資材など重くて大きなもの同士をくっつける接着剤もあるのです。そのような接着剤は、長期間の品質保持が求められます。
3-2.インク
最近の家庭用プリンターは、とても高品質です。一昔前までは専門店に依頼するのが当たり前だった写真の現像も、きれいにできます。このような色鮮やかなプリントを可能にしているのが、超音波分散を施したインクです。超音波分散をして分子を均一化しているからこそ、鮮やかな発色が可能になっています。
3-3.液晶ディスプレイ用のフィルター
テレビやパソコンのモニターの主流となった液晶ディスプレイのフィルターも、超音波分散された金属粉が使われています。均一化された金属粉を使うことで、透明感がある美しい色彩が再現できるのです。
3-4.医薬品
薬もまた、複数の原料を混ぜ合わせて作られます。医薬品によって胃で溶けて作用してほしいものや、腸で溶けて作用してほしいものなどの違いがあるのです。超音波分散を利用することで、より効能が出やすい薬を作れます。
また、分子の大きさを調整すれば、消化器官のどの部分で溶けるのかも調整できるのです。つまり、現代医学の一端(いったん)を超音波分散は支えています。
4.超音波分散機とは?
超音波分散機とは、文字どおり超音波分散を行う専門の機械です。物質の中に超音波を発生させる装置を入れ、大きな分子を砕くことで、製品を均一化します。「ホモジナイザー」と呼ばれることもあるでしょう。ホモジナイズとは「均一化」という意味で、先ほどご紹介したものだけでなく、食品など幅広い分野で行われているのです。超音波分散機というと、何やら大がかりなものを想像してしまう方もいるでしょう。
しかし、超音波分散機の中には、持ち運びができるサイズのものもあります。超音波分散機の需要は幅広く、製造工場だけでなく研究所などでも使用されているのです。ですから、サイズもたくさんあります。また、「どこまで物質を細かく、均一化できるか」によって値段も変わってくるでしょう。
5.超音波分散機を導入したい場合には?
超音波分散機の導入や買い替えを考えている場合は、まずメーカーごとの商品ラインナップを比べてみてください。メーカーごとに製品の特長があります。高品質の製品を作れるように特化したものもあれば、省エネに重点を置いた商品もあるでしょう。商品の展示会などで実際に触れられる機会があれば、実物を確かめてみてください。
メーカーによってはホームページで商品の説明や、特徴を詳しく行っているところもあります。ホームページ上から質問や商品説明の依頼を申し込むこともできますので、活用してください。
また、超音波分散機は年々進歩しています。ですから、古い機械を使っているという場合は、一度買い替えやリースのし直しを検討してみてもよいでしょう。製造している物質や使う目的によってもお勧めは異なります。「同じようなものを買い直したい」という希望でも、一度メーカー側の説明を聞いておくとよいでしょう。
おわりに
今回は超音波分散とそれを行う超音波分散機に就いてご説明しました。
まとめると
- 超音波分散とは、物質の分子を均一化して混ぜ合わせることである。
- 物質の分子を均一化することにより、より高品質の製品ができる。
- 私たちの身の回りには、超音波分散を行った製品がたくさんある。
ということです。
専用の機械による分散化のメリットを実感したいという場合は、一度手作りマヨネーズを作ってみましょう。マヨネーズは「乳化」の仕組を利用した食材です。材料は油と卵と酢だけ。作り方はこの3つを混ぜ合わせるだけです。とても簡単ですが、ただ混ぜ合わせているだけでは失敗することも多いでしょう。
市販のマヨネーズと食べ比べてみると後口が重いのが分かります。これが、人力による分散化や乳化と専門の機械による分散化や乳化の違いです。
また、超音波分散は物質の性質を変化させるものではありません。超音波分散をしたからといって物質の性質が変わってしまったり健康に何か影響が出たりするということは全くないのです。ですから、安心して使ってください。