界面活性剤の働きや構造は? 分かりやすくご説明します!

毎日暑い日が続いていますね。洗濯物がたくさん出て、1日に何度も洗濯機を回すご家庭もあるでしょう。洗濯といえば洗剤。では、洗剤を入れるとなぜ汚れが落ちるのでしょうか? それは界面活性剤の働きによるものです。

そこで今回は、界面活性剤の働きや性質、構造についてご説明します。私たちの身の回りには、界面活性剤を使った製品がたくさんあるのです。しかし、界面活性剤の役割や構造について詳しく知っている方は少ないと思います。興味がある方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。

  1. 界面活性剤って何?
  2. 界面活性剤が汚れを落とす仕組みは?
  3. 人は昔から界面活性剤を利用してきた
  4. 食品にも界面活性剤が大活躍

1.界面活性剤って何?

まず始めに界面活性剤とはどのようなものか、ということをご説明します。どうして汚れを落とせるのでしょうか?

1-1.界面活性剤の役割は?

界面活性剤は、物質の境目にあたる「界面」に作用して性質を変化させる物質の総称です。といっても、これだけで界面活性剤の役割をイメージするのは難しいでしょう。物質の中には、混じりあうものと混じりあわないものがあります。

一例をあげると水と油。このふたつはかき混ぜれば一時的に混じりあいますが、放っておくと分離してしまいます。そこに、界面活性剤を入れると水と油は分離せずに混じりあうのです。これを「乳化」といい、洗剤はこの「乳化」の性質を利用して汚れを落とします。

1-2.界面活性剤の構造は?

では、なぜ界面活性剤は水と油のような混じりあわないものを混ぜ合わせることができるのでしょうか? それは、界面活性剤の構造に秘密があるのです。界面活性剤は、ひとつの分子の中に水になじみやすい性質を持ったもの(親水性)と、油になじみやすい性質を持った分子(親油性)を備えています。

この構造を図で表すとまるでマッチ棒のように見えるのです。界面活性剤を水と油が混在している中に入れると、親水性と親油性の部分がそれぞれ水と油につながります。これが、界面活性剤を入れると水と油が混じりあえる理由なのです。

1-3.界面活性剤の性質は?

界面活性剤は、混じりあわないものを結びつけるだけでなく表面張力の低下や、分散作用、ミセル形成などの性質があります。コップのふちまで水が盛り上がっているコップに界面活性剤を一滴落とすと、水はあっという間にあふれてしまうのです。これは、界面活性剤が結びつきあっている水の分子をバラバラにすることによって起こります。

また、細かい粒子状の物質を水の中に入れると、底の方に固まって沈んでしまうこともあるのです。界面活性剤を入れれば、水の中に粒子状の物質を均等に分散させることができます。これが分散作用です。

さらに、水の中の界面活性剤の濃度をあげていくと界面活性剤は親水性の分子を外側に、ミセル(球体)を作ります。この状態で油分を水の中に入れると、このミセルの内側に油分を取りこむのです。界面活性剤のこのような性質が、汚れを落とすのに一役買っています。

2.界面活性剤が汚れを落とす仕組みは?

では、界面活性剤はどのように汚れを落とすのでしょうか? この項では、界面活性剤が汚れを落とす仕組みをご説明していきます。

2-1.洗濯物や食器につく汚れは?

洗濯物や食器につく汚れの主な成分は、油です。料理には油を使いますし、えりや袖口につく黒ずみは皮脂による汚れになります。また、うっかり服につけてしまう汚れも、化粧品や食品など油分が含まれているものが多いでしょう。

2-2.汚れに界面活性剤がつくと?

洗剤は水に溶かした状態で使います。界面活性剤入りの水が汚れに接触すると、界面活性剤の親油性の分子が汚れに取りつくのです。すると、表面張力が弱まって汚れが繊維からはがれやすくなります。親油性の分子が汚れに取りつくと、汚れの外側は親水性の分子でおおわれるのです。親水性の分子は水にひかれて汚れを包んだまま繊維から完全にはがれます。これが、界面活性剤が油汚れを落とす仕組みなのです。

2-3.さらに再汚染防止効果まで!

一度繊維から汚れがはがれると、繊維の表面にも界面活性剤の分子が取りつきます。この界面活性剤の分子同士は反発するので、一度はがれた汚れが再び繊維に取りつくのを防いでくれるのです。これが、洗剤のCMでおなじみの「黒ずみ防止効果」になります。

3.人は昔から界面活性剤を利用してきた

どうですか? ここまでの記事を読んでくだされば、界面活性剤の役割や性質をご理解いただけたと思います。現在、界面活性剤は化学合成されたものがほとんどです。しかし、昔から人は経験で界面活性剤を利用してきました。ムクロジやサイカチといった植物の実は汚れを落とす効果がある、とせっけんの代わりに使われてきたのです。

このムクロジやサイカチには「サポニン」という物質がたくさん入っています。このサポニンは界面活性剤とほぼ同じ構造をしているのです。ですから「天然由来の界面活性剤使用」などととうたわれている商品には、サポニンが使われていることが多いでしょう。

4.食品にも界面活性剤が大活躍

界面活性剤が活躍しているのは、洗剤だけではありません。食品の分野でも界面活性剤は大活躍しています。「汚れを落とすようなものを、食べて大丈夫なの?」と思うかもしれません。しかし、界面活性剤は化学反応を起こして汚れを落としているわけではないのです。食べられる物質の中にも、界面活性剤の働きを持つものが少なくありません。

一例をあげると、卵に含まれている卵黄レシチン。これを利用した食物がマヨネーズです。マヨネーズの原料は、お酢と油と卵。お酢と油だけならば分離して混じりあいません。しかし、卵を入れればクリーム状に混じりあいますね。これは、卵黄レシチンの働きです。

また、大豆にも「大豆レシチン」という同じような働きをする物質が含まれています。大豆レシチンといえば、単独でサプリメントとして売られているほど健康によいものです。ですから、食品に含まれている界面活性剤を食べても問題はありません。

哺乳類が出す乳の中にも界面活性剤は含まれています。牛乳の成分表を見ると「タンパク質、脂肪、水分」が含まれていることが分かるでしょう。この3つが分離せずに混じりあっていられるのは、界面活性剤のおかげなのです。しかし、絞ったばかりの牛乳は成分にバラツキがあるため、脂肪分が層のように表面に浮いていることもあります。牧場で牛乳を飲ませてもらうと、脂肪分の塊が浮いている場合があるのはそのためです。

おわりに

今回は界面活性剤の役割や構造についてご紹介しました。

まとめると

  1. 界面活性剤は水と油を混ぜ合わせる性質がある。
  2. この性質を利用すれば、汚れを落としたり新たな食品を作ったりできる。
  3. 天然の界面活性剤は昔から利用されてきた。

ということです。

水分と油分が混じりあった製品や食品は私たちの回りにたくさんあります。それらすべてに界面活性剤は使用されているのです。「界面活性剤」というと化学物質のようで、食べても大丈夫?と心配になる人もいるでしょう。そのため、食品に使われる場合は「乳化剤」と表記されています。乳化とは、前述したように界面活性剤の性質です。

また、乳化を行うと舌触りが滑らかになるという特徴もあります。マヨネーズはまるでクリームのようですよね。ですから、滑らかな食感の食べ物にはたいてい使われています。