HACCPとは?従来の衛生管理方法との違いや認定工場について
食品工場は消費者に届ける食品を製造しています。だからこそ、安心して食べることができる食品でなければなりません。消費者の信用を得る衛生管理の手法が“HACCP(ハサップ)”です。これから、HACCPとは何なのか、従来の衛生管理方法との違い、HACCP認定工場や認証について詳しく説明します。
HACCPについて知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
- HACCPとは?
- 従来の衛生管理方法との違い
- HACCP認定工場と認証について
1.HACCPとは?
最近では、食品への異物混入事件が目立ってきました。消費者も食品選びに慎重になっています。今の不安な時期だからこそ、食品工場は衛生面を徹底しなければなりません。そこで、衛生管理に大切なHACCPの出番です。
1‐1.国際的に認定している衛生管理方法
食品工場によって衛生管理方法は異なります。けれども、HACCPは国際的に認められている衛生管理手法の1つです。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関“食品規格委員会”が発表した衛生管理手法でもあります。国連が各国に推奨しているので安心・安全です。
HACCPの正式名称は「Hazard Analysis and Critical Control Point」になります。Hazard Analysisは危害の分析、Critical Control Pointは重要管理点を示しているのです。
つまり、食品製造や加工において発生する微生物・汚染という危害を分析すること、安全な製品を得るための段階・対策を定めることになります。以上の2点を連続的に監視することで、製品の安全を守っているのです。
1‐2.HACCPを導入するメリットは?
国際的に認めているHACCPを導入すれば、一体どんなメリットが生まれるのでしょうか。HACCPを導入する前にぜひ押さえておきたいポイントです。HACCPを導入するメリットはたくさんあります。たとえば、食品の大量生産において大切なのは“安定”です。一定した供給かつ、品質の安定さがなければ製造できません。HACCPを導入すれば品質のばらつきがなくなってクレームやロスが少なくなります。
実際、HACCPの導入によって取引先や消費者からの評価も向上したのです。また、衛生管理のポイントを明確にできます。記録も残るため、安全な製品が安定するのです。従業員同士、工程ごとに確認すべきこともハッキリとわかるでしょう。
1‐3.従業員のモチベーションがあがるHACCP
食品製造の工場規模が大きくなればなるほど、従業員たちの管理が難しくなります。しかし、HACCPを導入すれば従業員たちの管理はもちろん、モチベーションも向上するでしょう。
なぜなら、従業員たちによって働きやすい環境に整うことができるからです。食品工場の工程や製造のポイントをきちんと把握すれば、仕事がやりやすくなります。現場の把握しやすさは従業員のモチベーションにも関係する大切なポイントです。
従業員のモチベーションが向上すれば、自然と食品製造への意欲もあがります。工場内が活気づき、より良い食品が製造できるでしょう。結果、良い循環になります。
2.従来の衛生管理方法との違い
2‐1.問題のある製品の出荷が防止できる
HACCPと従来の衛生管理において、大きな違いは“問題のある製品の出荷”です。従来の衛生管理の流れは基本的に「製造工程」「検査の実施」「箱詰め」「出荷」の4つにわかれます。一方、HACCPでは原材料→調合→重鎮→包装→熱処理→冷却→箱詰め→出荷と細かく分類しているのです。よって、製品に問題が起きた場合すぐに対処できます。
継続的な監視・記録として温度や時間の管理、異物の検出を徹底しているのです。問題のある製品を出荷する前に防ぐことができるのはHACCP方式ならではの特徴でしょう。従来の衛生管理方法では防ぐことができなかった問題が回避できるのです。
2‐2.問題の原因追求が簡単にできる
もし、製品に問題が起こった場合、未然に防ぐだけでは不完全です。再び問題が起こらないように「原因」を突き止めて改善しなければなりません。根本的な原因が判明しなければ、安全・安心とは言えないでしょう。正直なところ、従来の衛生管理方法では原因を突き止めることが困難でした。しかし、製造過程のポイントを明確にしているHACCPなら原因の追及が簡単にできます。何が原因で問題が発生したのか、すぐに判明できるのです。
よって、問題解決への道も近くなります。ただし、HACCPを導入した施設では従業員たちに必要な教育・教訓を教えていかなければなりません。必要な教育・教訓を受けるからこそ、毎日同じ手順で作業ができます。
3.HACCP認定工場と認証について
3‐1.HACCP認定工場とは?
日本全国にはHACCPの認定を受けた認定工場がたくさんあります。日本だけでなく、全世界が共通している衛生管理方法なので、さまざまな国が導入しているのです。しかし、すべての食品工場が導入できるとは限りません。
HACCP認定工場になるには、HACCPプランと呼んでいる“衛生管理のためのマニュアル”を作成することが第1条件になっています。さらに、マニュアルには最低でもHACCPの7原則を取りいれなければなりません。HACCPの7原則とは、危害要因の分析・重要管理点・管理基準・測定方法・改善処置・検証手順・記録の維持管理方法の決定です。
以上の7原則をふまえたうえで、さらに5つの手順が必要になります。プラン作成や衛生管理実施をするためのHACCPチームの編成から製造工程の一覧図までやるべきことがあるのです。すべてをまとめて、“HACCP導入のための12手順”と言います。
3‐2.4種類あるHACCP認証
HACCP認証には主に4つの種類があることをご存じですか? 4種類とは、「地域HACCP」「業界団体認証」「総合衛生管理製造過程」「民間審査機関による認証」になります。それぞれ認証団体や特徴が異なるのでしっかり確認しなければなりません。
たとえば、地方自治体によるHACCPの「地域HACCP」は各自治体で決めたルールによって審査をします。対象製品や適用範囲に限りはありますが、中小企業でも取得しやすいでしょう。
一方、厚生労働省による認証制度が“マル総”と言われている「総合衛生管理製造過程」です。対象製品となるものは主に乳製品や清涼飲料水、食肉製品になります。以上のように、認証にもさまざまな種類があるため食品工場の目的に合った認証を取得してください。
まとめ
HACCPとは何なのか、従来の衛生管理方法との違いや認定工場と認証について説明しました。HACCPは国連が認めている衛生管理方法の1つです。全世界に共通しているため、安心・安全の製品を安定して供給できるでしょう。しかし、HACCPを導入するにはHACCP導入のための12手順についてのプランを立てる必要があります。時間と準備が必要になるため、チームを編成して1つずつ手順をふんでいきましょう。HACCPを導入するなら、ある程度の基礎知識を身につけることが大切です。
また、厚生労働省のページでは実際にHACCPに取り組んでいる業者を公表しています。実際に導入している工場の様子をチェックするのも良い参考になるでしょう。