液晶乳化法とは? 特徴や優れた点をご紹介します!
乳化とは、界面活性剤を用いて本来ならば混じり合わない水と油のようなものを混じり合わせることを指します。乳化を行うことで、私たちはいろいろな物質を作りだしたり物質を分離したりするのです。
今回は、そんな乳化の一種である「液晶乳化」についてご説明します。液晶乳化とは、どのような特徴があるのでしょうか? 開発者や現在利用されているものなども、ご紹介します。この記事を読めば、私たちが普段何気なく使っているものでも、高度な技術が使われていると分かるでしょう。
- 乳化とは?
- 液晶乳化の特徴は?
- 液晶乳化はどのような場所で使われているの?
- 自分で液晶乳化に近い状態を作ることは可能?
1.乳化とは?
液晶乳化についてご説明する前に、まずは通常の乳化についてご説明します。乳化とは、水と油のように本来なら混じり合わない物質を、界面活性剤に代表される「親水性」と「親油性」の両方を持った物質を利用することで混ぜ合わせることを指すのです。水に油をたらすと、混じり合わずに油が浮いてしまいますね。これをよくかき混ぜると、一時的に水と油は混じり合うのです。しかし、時間がたつと再び分離してしまいます。
界面活性剤は、この分離を抑える働きがあるのです。界面活性剤を加えた水と油は混じり合って、白濁します。これが乳化です。ちなみに「エマルジョン燃料」の「エマルジョン」とは、乳化という意味。つまり、燃料にも乳化の仕組みが使われているのです。
また、私たちの身近にも、乳化の仕組みを利用した製品があります。一例をあげるとマヨネーズとせっけんです。マヨネーズの原料はお酢と油と卵。お酢は水分ですから、油を加えても混ざりません。しかし、卵が乳化剤の役割を果たし、混ざり合っているのです。
洗剤は界面活性剤の親油性が布から皮脂汚れを引き離し、親水性の方が水と同化させます。ですから、汚れが落ちるのですね。ちなみに、界面活性剤の性質を持つ食材のことを「乳化剤」と言います。食品のパッケージを見れば、いろいろな食品に乳化剤が使用されていることが分かるでしょう。
2.液晶乳化の特徴は?
では、液晶乳化とはいったいどのような乳化なのでしょうか? この項では、液晶乳化の特徴や優れた点をご紹介します。
2-1.液晶って何?
液晶とは、界面活性剤が作る固体と液体との中間物質のことです。水分と油分と界面活性剤を混ぜ合わせると、油分は親油性を内側、親水性を外側にした界面活性剤に球状に包まれて、水の中に浮いている状態になります。この油の球を「液晶」と言うのです。
2-2.液晶乳化とはどういうこと?
液晶乳化は、1989年に鈴木喬氏が開発した乳化の方法です。液晶乳化を大まかに説明すると、水分の中に混ざっている液晶を微細化する技術のこと。液晶乳化をすると液晶(乳化粒子)が非常に小さくなるのです。液晶が大きければ、それだけ油分を強く感じます。
マヨネーズを手作りしてみたら、市販品より油っぽくなってしまったという経験はありませんか? これは、分散化が不十分だったため液晶が市販品より大きくなってしまったことが原因です。肉眼では界面活性剤に含まれた油の粒など見えません。しかし、舌や肌は敏感に大きさの違いを感じ取ることができるのです。
2-3.液晶乳化の優れた点は?
液晶乳化は、前述したように乳化粒子(液晶)が非常に細かい状態で乳化しています。ですから、一般的な乳化よりもはるかになめらかで油っぽさを感じさせません。肌につけたり味わったりしたときにさらりとした感触になります。
また、細かい油の粒の方が皮膚への浸透率もぐっと高くなるのです。さらに、水は皮膚の中にもありますが、油は異物。化粧品などで油分を肌につけるということは、それだけ肌の負担になります。ですから、油の粒が小さいほど肌への負担が少なくなるのです。
3.液晶乳化はどのような場所で使われているの?
液晶乳化は、主に化粧品を作るときに使われています。開発者も化粧品メーカーの研究員。女性の方ならお分かりいただけると思いますが、よい化粧品というのは肌の上で伸びがよく、肌になじみやすいです。化粧品にはいろいろな原材料が使われていますが、乳化をすることですべてを均一に混ぜ合わせています。年配の方に話を聞くと、「昔の化粧品はもっと粉っぽかったり油っぽかったりした」という方もいるでしょう。
また、昔の化粧品に比べて、仕上がりがより自然になっていると感じる方も多いと思います。それも、液晶乳化のおかげです。液晶が大きければ、油分が目立ちます。
夕方になると化粧品が皮脂で浮いてしまうという方もいるでしょう。油分が強ければ化粧品が肌からはがれやすくもなるのです。ですから、粗悪な化粧品を使うとなんだかてかてかした仕上がりになって、化粧崩れも早くなります。地味な技術ですが、液晶乳化は化粧品の品質の向上になくてはならないものだったのです。
4.自分で液晶乳化に近い状態を作ることは可能?
液晶乳化を行うには技術が必要です。ですから、行うには特別な機械がいります。しかし、自分で液晶乳化により近い状態に乳化することは不可能ではありません。先ほど手作りマヨネーズの例をあげましたが、界面活性剤に包まれている油の粒が大きいほど、油っぽさを感じます。それを小さくするにはどうすればよいのでしょうか? その方法は、ひたすらかき混ぜることです。
かき混ぜることで物質がより分散化し、油の粒は小さくなります。マヨネーズの本場はフランスですが、マヨネーズは男性が作るものだそうです。油と酢と卵黄を混ぜ合わせるとき、より強く激しくかき混ぜた方が軽くてふんわりとしたマヨネーズが作れるのだとか。これは、液晶乳化の原理と同じです。ですから、自分で作ったマヨネーズがどうも油っぽいという場合は、手ではなく電動ミキサーを使って作ってみましょう。
また、化粧品を自作する人も同じです。水分と油分と界面活性剤を混ぜ合わせるとき、混ぜ方がたりなければべたべたした化粧品になってしまうでしょう。自作の化粧品作りがどうもうまくいかないという方は、徹底的に混ぜてみてください。混ぜ方がたりないと界面活性剤を使っていても、水分と油分が分離しやすくなります。気をつけましょう。
おわりに
今回は、液晶乳化の特徴や優れた点をご説明しました。
まとめると
- 液晶乳化とは、界面活性剤に包まれた油の粒をより小さくした乳化のこと。
- 油の粒を小さくすることで、さらりとした肌触りになり肌への負担が少なくなる。
- 化粧品の品質向上に液晶乳化は欠かせない。
ということです。
液晶乳化は、技術としてはとても地味でしょう。気づく人も少ないかもしれません。しかし、化粧品の品質向上には欠かせないのです。この技術は1989年に日本人によって発見され、2007年に特許が取得されました。ですから、日本が世界に誇る技術と言っても過言ではないのです。
また、前述したように液晶乳化を自宅で行うのは無理ですが、より油分の粒を小さくすることはできます。よくかき混ぜるということは、とても単純な方法ですが、絶大な効果があるのですね。自作の化粧品やマヨネーズがいまひとつうまくできないという方は、時間をかけて念入りに書き混ぜてみてください。かき混ぜることによってより油の粒が水分の隅々にまで分散化します。そうすれば、肌触りや舌触りもよくなるのです。