乳化剤とは?知りたい方必見! 知っておきたい乳化剤の基礎知識

「乳化剤」という言葉を、聞いたり目にしたりしたことがある人は多いでしょう。しかしながら、具体的に乳化剤とはどのような原料を使用しているのかをご存じの人は少ないようです。ここでは乳化剤の原料や種類、役割や使い道などの基礎知識をご紹介します。

  1. 乳化剤とは?
  2. 乳化剤の役割・用途
  3. 乳化剤の種類
  4. 乳化剤の安全性

1.乳化剤とは?

「乳化剤」というと、特殊な薬剤のようなイメージを持つ人もいると思います。しかしながら、乳化剤は私たちの生活のさまざまなシーンで活躍している身近なものなのです。「乳化」とは、水と油のように混じり合わないものを均一に混合する働きを指します。そして、乳化剤とは「乳化」することを目的として使用される薬剤のことです。乳化剤は乳化のほかにも空気と液体、固体粒子と液体などを均一化する働きもあります。

乳化剤はほぼ界面活性剤と同義で、食品・洗剤・化粧品など幅広い分野で使用されているのです。ただし、食品の場合は「乳化剤」と表示され、洗剤や化粧品の場合は「界面活性剤」と表示されるのが一般的になっています。乳化剤が使用されている、身近な食品は以下のようなものです。

  • パン
  • アイスクリーム
  • チョコレート
  • コーヒークリーム
  • コーヒー飲料
  • ホイップクリーム
  • 魚肉練り製品(ソーセージ・ちくわ・かまぼこなど)
  • ドレッシング
  • 調味料類

※ マヨネーズの場合は卵黄が乳化の役割をしています。乳化剤を使用した製品は「マヨネーズ」の表示はできません。

2.乳化剤の役割・用途

乳化剤は役割や用途によって、数種類の食品添加物を使用して作られています。乳化剤はどのような働きをし、何に使用されているのでしょうか。具体的な例をご紹介しましょう。

2-1.乳化

水と油のように、混じり合わない2つの成分の一方を他方に分散し「乳化」することです。乳化には2種類あります。

  •  水のなかに油が粒子となっている水中油型(O/W型=Oil in Water)…牛乳・乳飲料・アイスクリーム・クリーム類など。
  • 油のなかに水が粒子となっている油中水型(WO型=Water in Oil)…バター・マーガリンなど。

※乳化してできたものを「エマルション(エマルジョン)」と呼びます。
基礎化粧品のクリームや乳液などに表示しているのを目にした人は多いでしょう。

2-2.分散

微粉末など、粒子の細かい個体を液体に安定して分散する働きです。

  • ココアの粉末を水に均等に分散したココア飲料など。
  • ココアの粉末を砂糖とともにカカオバター(油脂)均等に分散し固めたチョコレートなど。

が、挙げられます。

2-3.湿潤・浸透

  • 湿潤(しつじゅん)…水分が多く湿っていることです。
  • 浸透(しんとう)…液体がほかの物体などにしみとおることです。

表面張力を低下し、液体を固体の表面に広げぬれやすくします。また、隙間をぬって内部に浸透する働きもあるそうです。

例)粉末食品類・チューインガムなど。

2-4.起泡用

液体に溶けて泡を生じることを指します。液体を混ぜたときに発生する気泡を維持して、ボリュームを保つ働きです。液体と空気の界面(境界面)に作用し、表面張力を低下し接触面積を増加します。

例)パン・ケーキ・ホイップクリーム・アイスクリームなど。

2-5.消泡

液体に泡ができるのを防ぐこと、もしくはできた泡を消すことです。食品の泡立ちを抑えなめらかに仕上げる働きをします。

例)豆腐・ジャム・飲料など。

2-5.滑沢

なめらかでつやがある状態を指します。原料の粉末の流動性を高め、表面に光沢を与えるとともに、原料が機械に付着するのを防ぐのです。

例)錠剤状のお菓子(タブレット菓子など)・薬やサプリメントなど。

2-5.可溶化

水に溶けにくい、または溶けない物質を分散し水に溶けたような状態を指します。一般的な乳化だけでは液体が白濁したままです。可溶化により、溶けない物質が溶けたかのような透明な状態になります。

例)香料など。

2-6.洗浄

汚れをとりのぞいて洗うことです。食品用の乳化剤は洗浄効果は高くありません。石けんや衣類用洗剤、化粧品などに使用されます。

3.乳化剤の種類

食品に使用する乳化剤のなかで、日本の食品衛生法で使用が許可されているのは5種類です。それぞれの特性をご紹介しましょう。

3-1.グリセリン脂肪酸エステル

グリセリン脂肪酸エステルは、食品用の乳化剤のなかでは最も使用されている、安全性が高い乳化剤なのです。「グリセリン」と「脂肪酸」で構成した植物油を分解し、再びグリセリンと脂肪酸を「脱水縮合(だっすいしゅくごう)」して得られます。世界でも最も古くから使用され、乳化剤市場のほぼ半数を占めているといわれているのです。

また、グリセリン脂肪酸エステルの働きは乳化だけではありません。分散・起泡・消泡・湿潤作用やたんぱく質の改善などさまざまな働きをします。

  • コーヒークリーム・生クリーム・マーガリンなどの乳脂肪の乳化安定
  • チューインガムやチョコレートなどの成分の均一な分散
  • ケーキやアイスクリームの生地を起泡
  • 豆腐の消泡
  • パンやめん類などのでんぷん食品の改良

このほかにも、たくさんの機能を持っているのが、グリセリン脂肪酸エステルの特徴です。

3-2.ソルビタン脂肪酸エステル

食用油脂を分解した脂肪酸と、糖類の一種であるソルビトールを脱水したソルビタンを反応して作った乳化剤です。ソルビトールはりんごやイチゴ、なしなどの果物にも数パーセットほど含有されているほか、海草類にも含まれています。ソルビタン脂肪酸エステルは混合物なので、メーカーにより規格や性能などが異なるようです。

また、単品ではなくほかの乳化剤と一緒に組み合わせて使われます。

  • 乳飲料やアイスクリームの乳化安定
  • ショートニングやクリーム類のクリーミーさの向上
  •  清涼飲料水やチューインガム

3-3.ショ糖脂肪酸エステル

甘味料として非常に長い歴史を持つショ糖と、食用油脂由来の脂肪酸から作られる乳化剤です。無味・無臭で安全性に優れ、生分解性に優れているので環境にもやさしい乳化剤といわれています。

  •  コーヒークリームやホイップクリームなどの乳製品の乳化安定
  •  チョコレートのブルーミング防止
  • ケーキ類の起泡
  • 香料やビタミンなどの可溶化

3-4.大豆リン脂質(大豆レシチン)

大豆から抽出したリン脂質なので、天然の界面活性剤として多目的に使われます。

  • マヨネーズやマーガリンなどの乳化安定
  • パンなどの乳化分散
  • めん類の品質改良

3-5.プロピレングリコール脂肪酸エステル

プロピレングリコールと、食用油脂を分解して得られたものです。両方の成分を「エステル化」する方法と「交換」する方法があります。そして、「エステル化」したものよりも、「交換」で作られたほうが風味がよく仕上がっているそうです。プロピレングリコール脂肪酸エステルは、単独で使用することはありません。ほかの乳化剤の性質を改良・向上する働きを持っているので組み合わせて使います。

  • ケーキなどの起泡剤
  • 各種加工油脂の改質

4.乳化剤の安全性

パン・お菓子・乳製品・調味料・加工品など私たちが普段口にする食品に多用されている乳化剤は、安全性が気になります。食品や食材の風味をあげたり、食べやすくしたりするためには、乳化は欠かせない行程です。乳化剤は乳化以外にも起泡・消泡・湿潤ほかの作用や、でんぷん・油脂・たんぱく質の改質機能を持っています。成分の老化や粘着・酸化を防止する作用も持っているので、食品の加工には欠かせないのです。

食品衛生法で許可している乳化剤には、長年生活のなかで使用されているものもあります。健康には特に影響などはないので、乳化剤の安全性に神経質にならなくても問題はないでしょう。

まとめ

ここでは知っているようで知らない乳化剤の基礎知識をまとめてみました。

  1. 乳化剤とは
  2. 乳化剤の役割・用途
  3. 乳化剤の種類
  4. 乳化剤の安全性

私たちの食生活にはおなじみの、乳化剤の多様性と必要性がおわかりいただけたかと思います。乳化剤は、食材をより食べやすく、おいしくするにはどうしたらいいのか…と考えた末の知恵ともいえるでしょう。