表面張力の原理とは?なぜ、水は平面に落とすと球形になるの?
「表面張力」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
しかし、「どんな力なのか具体的に説明して」と言われたら、よく分からないと言う方も少なくないと思います。
そこで、今回は表面張力の原理についてご紹介しましょう。
表面張力の原理を利用した製品は、私たちの生活の中にたくさんあるのです。
「え、これも表面張力を利用していたの?」と思うものもあるでしょう。
興味があるという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
- 表面張力とは?
- 濡(ぬ)れやすいものと濡(ぬ)れにくいものの違いとは
- 表面張力の役割とは?
- 表面張力を弱めると……?
- 界面活性剤の仕組みと役割とは?
- おわりに
1.表面張力とは?
表面張力とは、表面の力をできるだけ小さくしようとする性質のことです。
しかし、これだけではピンとこないでしょう。
もう少し具体的に説明します。
平面に水滴を落とす球体になるでしょう。
これが、表面張力です。
同じ体積で比べると表面積が一番小さいものが球形なので、表面張力が強い物体ほど球形になります。
シャボン玉が丸くなるのも、表面張力のせいなのです。
では、なぜ表面張力が発生するのでしょうか?
それは、分子の結束力のせいです。
水に代表される液体の分子は結束力が強く、お互いがバラバラにならないように強く引きあっています。
液体の内部の分子は、強い力で四方八方に引っ張られているのです。
しかし、表面の分子は液体に触れていない部分は、引っ張る力がかかっていないので何とか内側にもぐりこもうとします。
そのため、より球形に近くなるのです。
2.濡(ぬ)れやすいものと濡(ぬ)れにくいものの違いとは?
しかし、どんな物体の上でも液体が球になるわけではありません。
物質によっては水が吸いこまれてしまうものもあるでしょう。
また、液体によっても表面張力は違います。
このように水が球形になりやすい場所、なりにくい場所の違いを「濡(ぬ)れ」と言うのです。
濡(ぬ)れは、物体の表面と球形に盛り上がった液体との角度で測ります。
これを「接触角」と言うのです。
この角度が大きいほど「濡(ぬ)れにくい」ものであり、逆に小さいほど「濡(ぬ)れやすい」ものであると言えます。
もう少し具体的に説明すると、物体に水滴を落としたときに水滴が小さく盛り上がりが大きいほど濡(ぬ)れにくい物体、水滴が広範囲に広がったり水が染みこんだりしてしまうものは、濡(ぬ)れやすい物体なのです。
また、液体の種類や添加物によっても表面張力は変わってきます。
撥水加工(はっすいかこう)された衣類などでも水ははじくけれどジュースやお酒はシミになってしまった、ということもあるでしょう。
これは、水の中に糖分やアルコールなどが添加されたことで、表面張力が変わってしまったことで起きる現象です。
3.表面張力の役割とは?
さて、ここまで読んでいただければ表面張力がどのようなものかお分かりいただけたと思います。
表面張力自体は、水の分子自体が持つ自然の力です。
しかし、その仕組みを利用した製品が私たちの身の回りにはたくさんあります。
一例をあげると前述した撥水加工(はっすいかこう)です。
撥水加工(はっすいかこう)とは、水の表面張力をより増すこと。
水の表面張力が強まれば、水は物体の上にとどまっていられずに転がり落ちてしまいます。
布張りの傘が濡(ぬ)れないのは、このような撥水加工(はっすいかこう)のおかげなのです。
また、競泳の水着なども表面張力を調整することにより、水の抵抗をなくしてより速く泳げるようにしています。
3.表面張力を弱めると……?
では、逆に表面張力を弱めるとどのようなことになるのでしょうか?
その一例が、乳化です。水と油を混ぜ合わせようとしてもうまくいきません。
水の表面に点々と油が浮かぶばかりでしょう。
これも、表面張力のせいです。
水も油もそれぞれの表面張力が強いので、それぞれの分子同士で固まってしまいます。
そこで、この分子同士の結合を弱めてあげると、水と油が混じり合うのです。
分子同士の結合をゆるめるのは、実はそれほど難しくありません。
激しく振るだけで一時的に分子の結合はゆるみます。
サラダにかけるドレッシングはよく振ってからかけますが、これは一時的に表面張力を弱めて水と油を混ぜ合わせるためなのです。
4.界面活性剤の仕組みと役割とは?
さて、表面張力を弱めるには液体を振ればよい、とご説明しましたがこれだけでは時間がたつと元に戻ってしまいます。
水と油のように表面張力が強いもの同士を混ぜ合わせるためには、界面活性剤の力が必要。
この項では界面活性剤の仕組みと役割をご説明しましょう。
4-1.界面活性剤とは?
界面活性剤とは、水と油を混ぜ合わせた状態をたもつ効果のある物質です。
界面活性剤は親水基と親油基という2本の腕を持っています。これを水と油の中に入れると界面活性剤が分子同士の結合をゆるめ、水と油の分子をくっつける接着剤の役割を果たすのです。
また、水に界面活性剤を入れて一定の撥水性(はっすいせい)がある平面の上に落とすと、球体を作らずに広がります。
これは、界面活性剤によって分子の結合力が弱まるためです。
4-2.界面活性剤の効果とは?
界面活性剤は、私たちの身の回りの製品にたくさん使われています。
一例をあげると石けんと化粧品です。
石けんは、布につけて洗うと皮脂汚れを落とします。
これは、石けんの中の界面活性剤が油の分子結合を弱め、水と混じり合わせるためです。
体についた汚れを落とすのも同じ仕組みになります。
私たちの体から毎日出る汚れは、大部分が油性です。
それに石けんをつけると汚れが水と混じり合って体から落ちてくれます。
ただし、界面活性剤は油性の汚れにしか効果がありません。
ですから、泥汚れなどは石けんでは落ちにくいのです。
一方化粧品は、肌に染みこんだり肌の上に塗ったりことによって効果を発揮するもの。
界面活性剤がなければ、美容効果のある水性の物質は肌の上ではじかれてしまうでしょう。
つまり、美容成分が肌に染みこむのは界面活性剤のおかげなのです。
また、クレンジングオイルにも界面活性剤が使われています。
化粧品と皮脂の汚れを、界面活性剤が水と混じり合わせることで落ちるのです。
また、界面活性剤は食品にも使われています。
代表的なものはマヨネーズでしょう。
これは、卵が界面活性剤の役割を果たすため、お酢と油が混じり合ったままクリーム状になっているのです。
5.おわりに
いかがでしたか?
今回は表面張力の原理や活用方法などをご紹介しました。
まとめると
- 表面張力とは、表面の力をできるだけ小さくしようとする性質のこと。
- 水が球形になるのは、表面張力の原理が働いているため。
- 撥水加工(はっすいかこう)は、表面張力の力を強めることで、水をはじく。
- 界面活性剤の力を使えば、表面張力が弱まって水と油のように表面張力が強いもの通しでも混じり合う。
ということです。表面張力の仕組みを利用することによって、私たちは液体同士を混ぜ合わせたりはじいたりしています。
表面張力、という力が発見されたのは、18世紀に入ってからです。
しかし、それ以前から私たちは表面張力を経験によって知り、利用してきました。
ちなみに、表面張力を強くしたり弱くしたりする原理を知っていれば割れにくいシャボン玉を作ったり水と油を素早く混ぜたりもできます。
今は、全国で子どもが科学に興味を持つような実験教室が開かれていますが、実験の中にも表面張力の仕組みを利用したものが多いのです。