三相乳化とはどんな技術?どんな分野で使われているの?


「乳化」というのは、本来なら混じり合わない油分と水分を混じり合わせた状態を指す言葉です。
乳化の技術は、食品、医薬品、化粧品、燃料とさまざまな場所で使われています。
ですから、乳化の技術もいろいろあるのです。
今回は、その中のひとつ「三相乳化」についてご説明しましょう。
三相乳化の最大の特徴は界面活性剤を使わないこと。
は、どのようにして乳化を行うのでしょうか?
答えはこの記事を読めばわかります。
興味がある方は、必見ですよ。

目次

  1. 乳化の仕組みとは?
  2. 三相乳化とは?
  3. 現在、三相乳化が使われている商品とは?
  4. おわりに

1.乳化の仕組みとは?

三相乳化についてご紹介する前に、まずは一般的な乳化の原理や方法についてご紹介します。
私たちの身近にある製品も、乳化の仕組みを利用したものが多いのです。

1-1.乳化とは?

乳化とは、水性と油性の物質を混ぜ合わせた状態です。
水の上に油をたらすと混ざらずに油が水面に浮かびます。
これを、よくかき混ぜてください。
水と油が混じり合います。
これが、「乳化」です。
サラダなどに使うドレッシングは、「事前によく振ってください」という表示があります。
これは、振ることでドレッシングの主原料である油と酢(水性)を乳化させるためなのです。
ちなみに、水性の物質の中に油分が混じり合うことをO/W型、その逆をW/O型と呼びます。

1-2.乳化を安定させるには?

しかし、単純に水性と油性の物質を混ぜ合わせるだけでは、時間がたてば再び分離してしまうのです。
乳化を安定させるには、「界面活性剤」という物質を添加します。
界面活性剤とは親水基(しんすいき)と親油基(しんゆき)という面を持つ物質のこと。
これが接着剤の役割を果たし、水と油が分離しなくなるのです。
界面活性剤という言葉だけを見ると、化学合成された物質のように思えます。
しかし、自然界にも界面活性剤と同じ働きをする物質はあるのです。
一例をあげると、卵。
卵を酢と油の中に入れてかき混ぜると、酢と油は分離せずにクリーム状に固まります。
これがマヨネーズです。
ちなみに、食品に使われる界面活性剤は「乳化剤」と呼ばれています。
自然由来のものも多いので、体に影響はありません。

1-3.乳化の仕組みを利用した製品とは?

私たちの身の回りには、乳化の仕組みを利用した製品がたくさんあります。
代表例をあげると、洗剤やクレンジングオイルです。
洗剤は、皮脂などの油性の汚れを界面活性剤が包みこんで、水の中に溶けこむことで汚れを落とします。
石けんもこの仕組みで汚れを落とすのです。
クレンジングオイルは、油分で皮脂や化粧品を落としますが、汚れを吸収した油分を界面活性剤が水で落としやすくしています。
また、皮膚に浸透する化粧水や美容液なども界面活性剤が入っているのです。
さらに、「エマルジョン燃料」も水分と油分を混ぜ合わせた燃料。
ちなみに、エマルジョンとは乳化を英語訳したものになります。

2.三相乳化とは?

では、三相乳化とはどういう方法で物質を乳化させるのでしょうか?
この項では、技術の特徴をご紹介します。

2-1.界面活性剤を使わない乳化方法

三相乳化は、界面活性剤を使用しない乳化方法です。
その代わりに、柔らかい親水性ナノ粒子の物理的作用力(ファンデルワールス引力)を利用して物質を乳化させます。
前述したように、界面活性剤は水と油の両方を引き寄せる性質があるのです。
しかし、この性質を利用した乳化は、O/W乳化とW/O乳化で界面活性剤を変えなくてはなりません。
また、2種類以上の物質を乳化させる場合は、状態を安定させるために複数の界面活性剤を使う必要があったのです。
つまり、たくさんの原材料を使った物質の乳化ほど、界面活性剤の種類も多くしなければなりませんでした。
複数の界面活性剤を使うということは、原価もかさみますし、物質を最も安定させる配合も考えなくてはなりません。
しかし、三相乳化では1種類の界面保持剤があれば、どんな乳化でもできるのです。
また、酸性でもアルカリ性の物質でも長期に安定させることも可能になります。

2-2.三相乳化を使った製品の特徴とは?

三相乳化を使った製品は、「球体ラメラ構造」になっています。
これは、肌の保湿構造と同じです。
ですから、非常に浸透性が高くなります。
つまり、三相乳化を使った美容液などは、従来の乳化方法を使った製品よりより肌になじみやすいでしょう。
また、浸透性が高いということは、たとえ油分の多い製品でもべとつくことがありません。
美容液やクリームの中には、「べとついてなじませるまでが大変」というものもあるでしょう。
三相乳化を使ったものならば、油分が多いものでもすぐに肌になじんでくれます。
また、食品に使用した場合は、油脂分が多くてもさっぱりと食べられるでしょう。
ですから、「コクがあるのにすっきりとして食べやすい」商品ができるのです。

3.現在、三相乳化が使われている商品とは?

三相乳化はまだ新しい部類の技術です。
開発されたのが2005年、特許出願が2006年ですから、まだいろいろな製品に使われているというわけではありません。
そこで、最後に三相乳化が現在使われている商品をご紹介します。

3-1.化粧品

前述したように、三相乳化は化粧品の性能を向上させる効果が期待できます。
ですから、美容液や乳液、さらに日焼け止めなどに利用されているのです。
三相乳化の技術を開発したのは神奈川大学の研究所ですが、大学オリジナルブランドの化粧品も開発されています。
ですから、機会がありましたらぜひ使ってみてください。

3-2.食品

三相乳化を使ったマーガリンが開発、販売されています。
マーガリンは植物性油脂を使ったバターとよく似た商品です。
「バターの代用品」と思われがちですが、バターよりも後口が軽いため、料理によってはマーガリンを使ったほうが合うこともあります。
マーガリンは植物性油脂と発酵乳を混ぜ合わせてつくられているのです。
つまり、油性のものと水性のものを混ぜ合わせてうます。
従来は界面活性剤の一種である乳化剤を使っていましたが、三相乳化の技術を使えばより後口が軽い製品ができるでしょう。
まだ、一部のメーカーで少量生産されているだけですが、これから生産量が増えてくる可能性は高いです。

4.おわりに

いかがでしたか?
今回は、三相乳化の技術についていろいろとご紹介しました。
まとめると

  • 三相乳化は2006年に特許を取ったまだ新しい技術。
  • 界面活性剤を使わずに乳化ができる方法である。
  • 安定性が高く、複数の界面活性剤を使う必要もない。
  • 何種類もの物質を混ぜ合わせても安定して乳化できる。
  • 浸透性の高い化粧品が作れる。

いうことです。
日本の乳化の技術は、化粧品メーカーが開発したものが多いという特徴があります。
今までも、画期的な乳化法が開発されてきましたが、この三相乳化も業界の注目を集めているのです。
私たちの身の回りにある製品に幅広く使われるようになるまでは、もう少し時間がかかるかもしれません。
しかし、前述したように一部の化粧品や食品はすでに販売されています。
ですから、「三相乳化の技術を使いました」と広告された化粧品を見たら、興味がある方は試してみましょう。
従来の化粧品との違いを実感できるかもしれません。


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