乳化を行う方法にはいろいろな種類があった!一挙にご紹介します!

「乳化」というのは、本来は混じり合わない水と油を混ぜ合わせた状態を指します。私たちの身の回りにあるさまざまなものが、この「乳化」の技術を使って作られているのです。

そこで今回は、物質を乳化させるやり方の種類をご説明しましょう。最も単純な乳化の方法は、水と油をよくかきまわすことです。では、そのほかにはいったいどのような方法があるのでしょうか? 興味がある方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。日本人が開発した技術も多いのです。

  1. 乳化とは?
  2. 乳化の技術が使われている製品は?
  3. 乳化の方法にはどんな種類があるの?
  4. 界面活性剤と化粧品の関係

1.乳化とは?

乳化とは、水と油が混ざり合った状態のことを指します。通常、水と油は混じり合いません。しかし、「よくかき混ぜる」などの工程を加えると、混ざり合います。サラダに使うドレッシングには「使用前に振ってください」と注意書きがされているでしょう。あれは、振ることによって、水と油が混じり合うためです。これも乳化の一種。

また、ただ振るだけでは、時間がたつと再び水と油は分化してしまいます。そのため、乳化した状態をたもつ物質を加えることもあるのです。この物質を、乳化剤や界面活性剤といいます。マヨネーズはお酢と油と卵を混ぜ合わせた調味料ですが、卵が乳化剤の役割を果たしているので、水と油が分離しないのです。

2.乳化の技術が使われている製品は?

あまり知られてはいませんが、私たちの回りには乳化の技術を使った製品がたくさんあります。代表的なものをあげると、洗剤・化粧品・食品・燃料などです。洗剤を使うと汚れが落ちるのは、皮脂などの油性の汚れを界面活性剤が包みこんで水と混じり合うため。

また、化粧品の多くに油性の物質と水性の物質の両方が使われています。さらに、メイク落としに使うクレンジングオイルも、乳化の性質を応用して化粧品と皮脂汚れを肌から落とすのです。このほかにも、エマルジョン燃料も乳化の技術を使ったもの。乳化の技術がなければ、私たちの生活は随分と不便なものになるでしょう。

3.乳化の方法にはどんな種類があるの?

物質を乳化させるためには、いろいろな方法があります。この項では、乳化する方法の種類をご紹介しましょう。単純にかき混ぜる以外にも、いろいろな方法があるのです。

3-1.機械乳化法

水分と油分を撹拌(かくはん)する、最も基本的な乳化方法です。ドレッシングを振ることも、機械乳化の一種。大規模に乳化を行うならば、ホモジナイザーなどの機械を使います。ちなみに、乳化には油分に水分が粒子となって分散している油中乳化(w/o乳化)と、逆に水分に油分が粒子となって浮かんでいる水中乳化(o/w乳化)があるのです。どちらの乳化も、分散している粒子が細かいほど、物質が均一化して高品質になります。

3-2.転相乳化法

撹拌(かくはん)して水と油を乳化させても、時間がたてば再び分離してしまいます。そこで、界面活性剤を加えることで、乳化したままの状態を安定させるのです。乳化の途中で連続相が水から油(その逆もある)に変化(転相)するので、「転相乳化」と呼ばれています。マヨネーズも、転相乳化した製品ですね。

ちなみに、乳化にはHLB(親水性親油性バランス)という数値があります。親水基を全く持たない物質をHLB=0、親水基だけを持つ物質をHLB=20として、等分化した数値です。このHLBが釣り合って、3相領域が出現する転相温度で撹拌(かくはん)を行い、一気に冷却させる方法を「転相温度乳化方法」といいます。

3-3.液晶乳化法

化粧品を製造する際に行われることが多い方法で、水にグリセリンを加えた保湿剤に界面活性剤と油を加えて液晶を作り、そこに水を加えます。この液晶乳化方法を考案した鈴木喬氏が、化粧品メーカー資生堂で作りだした特殊な乳化方法が、「非水乳化法」です。

やり方は液晶乳化と同じですが、非イオン化活性剤を用います。界面張力の低いところで乳化を行えるため、強い撹拌(かくはん)力が必要ありません。また、親水性海面活性剤単品で乳化ができます。

3-4.アミノ酸ゲル乳化法

水分を多く含む油中乳化をする際に、アミノ酸を用いることで油をゲル状にして高い安定性を持たせた乳化技術です。こちらも、資生堂によって開発されました。現在、資生堂の化粧品で使われている乳化の多くが、このアミノ酸ゲル乳化方法です。

3-5.D相乳化法

こちらは、化粧品メーカーのポーラが開発した方法です。D相とは、界面活性剤相のこと。それを発生させる代わりに溶性の多価アルコール添加により非イオン界面活性剤のHLBを調整してD相を形成させます。通常の陰イオン界面活性剤を用いるより、油分を分散させて繊細な乳化が可能なのです。

4.界面活性剤と化粧品の関係

さて、どうでしたか? ここまで記事を読まれた方は、多くの乳化法が化粧品メーカーによって開発されていることに、気づかれたと思います。化粧品は、肌の上に直接長時間塗るものです。化粧の歴史は古く、肌にきれいに塗れるようにいろいろな薬品が使われてきました。中には体に有害な物質もあり、化粧品がかえって肌をいためてしまうことも少なくなかったのです。

現在の化粧品は、前項までにご紹介した乳化方法によって作られていますから、肌に負担をかけず長時間崩れません。しかし、24時間つけっぱなしではやはり肌に負担がかかります。化粧品は毎日しっかりと落とすことも大切。クレンジングオイルや化粧落としを使ってメイクを落としましょう。しかし、「界面活性剤が肌をいためる」という意見を聞いたことがある方もいると思います。

その為、クレンジングオイルを敬遠するかたもいるでしょう。界面活性剤は、物質を乳化させるためになくてはならないもの。キッチン用の洗剤などにも使われています。この界面活性剤は陰イオン界面活性剤といい、脱脂効果があるために、使いすぎると肌荒れを起こしてしまうのです。それと同じ理由で、「界面活性剤入りのクレンジングオイルなどは肌をいためる」という意見が出てきたのでしょう。

でも、ご紹介したように、化粧品に使われている界面活性剤は「非イオン界面活性剤」といい、「陰イオン界面活性剤」よりも親水基を多く含んでいます。ですから、肌に優しく食品にも「乳化剤」として使われているのです。つまり、界面活性剤を使っているから肌に悪い、とは言いきれません。敏感肌の方など肌の弱い方は、非イオン界面活性剤でも肌が荒れる可能性はあります。

おわりに

今回は、乳化をする方法の種類についていろいろとご紹介しました。
まとめると

  • 乳化の基本は水と油をよく撹拌(かくはん)することである、
  • 温度や水と油の加え方、界面活性剤の種類などでより繊細な乳化を行える、
  • 乳化方法の多くは、化粧品メーカーで開発された。

ということです。

「水と油を混ぜ合わせる」という単純なことに、これだけ多くの方法があると知って驚かれた方もいるでしょう。複雑な過程の乳化方法は化粧品の製造に用いられていますが、機械乳化は主に食品の分野で使われています。市販のマヨネーズが手作りのマヨネーズよりもさらりとして後口が軽いのは、ホモジナイザーという機械で粒子を細かくしているため。機械乳化は一見単純な方法に見えますが、撹拌(かくはん)の仕方しだいで舌触りや肌触りが驚くほど変わってくるのです。手作りで後口の軽いマヨネーズやアイスクリームを作りたいという方は、勢いよく長時間かき混ぜてみてください。市販のマヨネーズやアイスクリームの味に近くなるでしょう。